「サナエちゃーん!」と大声で呼びながら、サナエとユカリの元へやってきたミナ。 振り向いたサナエに「はい、これ」と笑顔で手渡したのはサナエちゃんへと書かれた手紙だった。 受けとったサナエが手紙を眺めて「何?ラブレター?」と聞くと「違うよ!!普通のお手紙だよ!今みんなやってるじゃない!知らないのー?」と言うミナ。 サナエにあっけなく「知らない」と言われてミナは「もー!」とむくれる。 そしてすぐにユカリの方を見て「後でユカリちゃんにも書くねー」と笑顔で言うが、「嬉しいけど、授業中は勉強しなよ」とユカリに言われてしまう。 ところがミナはそんなことは気にも留めず「勉強より友情が大事でしょ!」とそのままの笑顔で答えるのだった。 そんな女子達の様子を少し離れたところから見ていた西片くん、中井くん、高尾の3人。 「最近女子って手紙ブームなのか?」という高尾に「みたいだなー」という中井くん。 「ラブレターも書いてたりしてな」という高尾の言葉に笑いながら「何でも結構マメに書くよなー」という中井くん。 その隣で西片くんは1人、心の中で「ラブレターか」とつぶやいていた。 すると高尾が「口で言えばいいのにわざわざ手紙とか、よくそんなめんどくさいことするよな。 よっぽど暇なんだな」と言い出す。 するとそれを耳にしたサナエの表情が一変する。 自身に手紙が来るとは思ってもいなかった西片くんは、もう1度教科書を開いて手紙を見つめた。 そして「どうしたの?西片」という高木さんの声に驚いてしまい、慌てて「何でもないです!」と教科書を閉じる。 「手紙?誰からだ!?一体なぜ俺に?」と思いながら、先程の高尾の「ラブレターも書いてたりしてな」という言葉を思い出す。 「いやいやいや!?まさかそんなことは!!」と心の中で否定した後「誰かのいたずらに…」と思った瞬間に「そぉだ!高木さんのいたずらかもしれないぞ」と閃いた西片くん。 そこで「高木さ…」と呼びかけるが、「ちょっと待て。 違ってたらどうする?高木さんじゃなかったら」という考えが頭に浮かぶ。 もし手紙の相手が高木さんじゃなかったら手紙をもらったことがバレてしまい、またからかわれてしまうと西片くんは考えた。 そこで「何?西片」と返事をしてきた高木さんに対して「今日は良い天気だね」と誤魔化すのだった。 しかし即座に「何か誤魔化してる?」と高木さんに指摘されて顔が赤くなってしまう西片くん。 怪しまれながらも必死に誤魔化すが「何で教科書閉じてるの?」と高木さんに言われてしまい、返答に困ってしまう。 「いや。 そのー」と顔をポリポリ掻いていると「それと顔赤いの関係ある?」と質問されてしまい「ないよ!顔も赤くないってば!」と必死で否定する。 それでも「ほんとに何もないの?」と聞いてくる高木さんに「だから何もないって!!」と言う西片くんだがその顔は真っ赤である。 「ふーん。 私の気のせいだったかー」と言う高木さんの言葉に、西片くんは安堵の表情を浮かべた。 しかしその直後「あと、教科書に挟んでる手紙、私だから」と高木さんは言う。 それを聞いて「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーやっぱりかぁーー!!!!」と心の中で叫ぶ西片くん。 西片くんは震える手で教科書を開いて、手紙をつまみ上げながら「完璧に分かってたよ。 そんなことは」と必死で余裕の表情を見せようとするも「嘘だー」と高木さんに笑われてしまう。 西片くんが「実は高木さんを泳がせて楽しんでいたのさ」と強がりを言っていると、高木さんが「中、読まないの?」と言ってくる。 「何か書いてあるの?」と聞く西片くんに「当たり前だよー!」と言う高木さん。 西片くんは「どうせまたからかうような内容だろ?」と高木さんに言うが、高木さんは何も答えない。 なぜ何も答えないんだと思いながら「じゃあ、帰ったら読むよ」と言うと、高木さんは「今、読んでよ」と急かしてくる。 「なんでよ?」と聞くと「だってこの授業終わったら下校でしょ?それまでに返事欲しいから」と言う高木さん。 「返事?」と聞き返す西片くんは、「返事のいる手紙ってことは質問されているってことだ。 ただ俺をからかうだけの内容じゃないのか」と思いながら高尾の「ラブレターも書いてたりしてな」という言葉を思い出す。 西片くんは「ラブレターの可能性もゼロではないのか!!」と思いながら、高木さんに「もしかしてラブレターだったりして」とふざけた様子で聞いてみる。 高木さんは何も言わずにジッと西片くんを見つめたあと「読んでくれないの?」とだけ聞いてくる。 西片くんは「読めばいいんでしょ」と言いながら、どんな内容でもからかわれないように堂々としてようと心に決める。 その一方で「でももし、可能性なんて全然、絶対ないだろうけどもしラブレターだったら俺は…」と思いながら高木さんの顔を見つめる。 西片くんが意を決して手紙を開くと『西片へ 今日一緒に帰ろー 高木より』とだけ書かれていた。 『入学式』 入学式の日、職員室に寄っていた西片くん。 応対した先生にお礼を言われ、職員室を後にする。 教室では担任の田辺先生が教壇で話をしている最中だった。 教室の後ろの席で鞄の中を漁りながら何かを探している高木さんは「落としたかな?」と悲しそうな表情を見せている。 ちょうどその時、田辺先生の話の途中で西片くんが申し訳なさそうな顔をして教室へ入ってくる。 「ん?いきなり寝坊か」という田辺先生に「いえ、あの」と言いかける西片くんだが「その度胸だけは認めてやる」と田辺先生が言うので何も言えなくなってしまう。 「名前は?」と鋭い目つきで聞いてくる田辺先生に小さな声で「西片です」と答えるのが精一杯の西片くん。 「まぁいい。 座れ」と言われて空いている自分の席に座る西片くん。 西片くんは「うぅ~。 目立ってる。 このまま遅刻キャラが定着する前に皆と仲良くなって誤解を解かないと」と心の中でつぶやいた。 ちょうどその時、田辺先生の元へ式の準備が遅れているという連絡が入ってくる。 時間が出来たのでその間に席順を決めることになった。 その結果、窓際の一番後ろの席になった西片くんは「何てこった。 一番後ろの一番隅っこ。 本来なら嬉しいとこだが、今の俺にはデメリットしかない」と思っていた。 「ただでさえ誰も知らないのに左も後ろもいないなんて。 しかも隣は女子」と思う。 西片くんの隣の席は高木さんだった(西片くんはまだ高木さんの名前を把握していない)。 西片くんが隣の席に座っている高木さんを見ていると、それに気づいた高木さんは「本当に寝坊したの?」と話しかける。 西片くんが話しかけられた事に驚いていると、高木さんは「先生に何か言いかけてなかった?」と続ける。 西片くんは「いや、何て言うか…」と言いながら、心の中では「くっ!遅刻さえしなければ、ちゃんと学校には着いていたのに」と思っていた。 そして一言「高木さんって人のせいだ」とつぶやくと、その言葉に「えっ?」と一瞬驚いた表情を見せる高木さん。 ちょうどその時、田辺先生から入学式の為に体育館に移動するように言われ、話は途中のままになった。 西片くんの言ったことが頭に引っかかっていた高木さんは、「もしかして…」と何かに気づくのだった。 入学式が終わって教室へ戻ってきた1年2組の皆は各々自由に談笑していた。 「初日から遅刻なんてすげぇな」と中井くんに肩を叩かれるながらうなだれる西片くん。 そこへ担任の田辺先生が入ってきて席に着くように促す。 皆が席に着く中、隣の女子(高木さん)がいないことに気づく西片くん。 すると「すみません、遅れました」と言って教室に入ってくる高木さん。 早く座るようにと田辺先生に言われて席に着く。 「今日はこれで終わりだが、明日から授業始まるからな。 入学式だからって浮かれてないで」云々と話をしていると、「ねぇ、西片くん」と、高木さんが話しかけてきた。 西片くんが少し驚いて隣を見ると、高木さんが「今日、西片くんが遅刻した理由、当ててみようか」と言い出す。 そして「1回で当たったら私の勝ちね」と高木さんは続けた。 「いいよ」と答える西片くんだが、内心1回で当たるわけがないと思っていた。 しかし「落とし物、届けてたから」という高木さんの言葉に驚いて思わず席から立ち上がって大声で「えぇ!?何で!?」と叫んでしまう。 クラスの皆が振り向いて注目する中、即座に田辺先生に「おい!うるさいぞ西片!」と怒られてしまう。 「すみません」と謝って席につき「何で?」と小声で高木さんに尋ねる西片くん。 すると高木さんがスカートのポケットからハンカチを取り出し「何ででしょう~」と言いながら西片くんに広げてみせる。 ハンカチには刺繍された『Takagi』の文字があった。 ようやく自分が拾ったハンカチの持ち主の高木さんが目の前にいる女子だと理解した西片くんは目の前にいる高木さんを指さして「高木さん??」と言う。 「自己紹介の時いなかったもんね」という高木さんに「はぁぁぁぁぁー。 あぁーー」と頭を抱えて声を出す西片くん。 それを見て笑い声を上げて「何?その反応!」と面白そうに言う高木さん。 すると田辺先生に「こらー!そこうるさいぞ!」と注意されてしまい、西片くんと高木さんは2人揃って「すみません」と謝る。 それでも笑いが止まらない高木さん、笑い泣きした涙を指でぬぐいながら「拾ってくれてありがとね」と西片くんに言った後「これからよろしく」と満面の笑みで言う高木さん。 その笑顔を見て、思わず頬を赤くしてしながらも「よろしく」という西片くんであった。 『席替え』 夜、自分の部屋で黙々と腕立て伏せをする西片くん。 75回の腕立て伏せをした後、自分の二の腕の筋肉を見て「結構ついてきたな」と満足そうな様子。 続けて部屋の壁を使って逆立ちをするも、バランスを崩して倒れ膝をぶつけてしまう。 ズボンをめくって膝を見てみると青アザになっていた。 それを見た西片くんは、前に膝を怪我したときに高木さんがハンカチを貸してくれたことを思い出す。 そして、タンスの中に洗濯後にしまったままになっていた高木さんのハンカチを見つける。 次の日、高木さんに返そうとポケットにハンカチを入れて登校するが、教室にはまだ高木さんは来ていなかった。 「まだ来てないのか」とボソリとつぶやいた直後に後ろから「おはよう!西片」と高木さんがやってきて驚く西片くん。 すると高木さんが「知ってる?西片。 今日席替えなんだってさ」と無表情で告げて自分の席へと歩いて行ってしまう。 高木さんの後を追いながら自分の席に着き「いつ?」と高木さんに聞く西片くん。 「ホームルーム」という高木さんの答えに「1時限目じゃないか」と心の中でつぶやきながら神妙な表情になる西片くん。 目の前では高木さんが先程から黙々と鞄の中身を机の中にしまっている。 西片くんはポケットのハンカチに手をかけ、意を決して「高木さん」と言いかけたが同時に「どうしたの?」と高木さんに言われてしまう。 ホームルームの時間になり、くじ引きで席順を決めることになった。 各々引いたくじの番号の通りに机を移動させるようにと田辺先生から指示があった。 「西片、何番だった?」と聞いてくる高木さんに「29番」と答える西片くん。 29番は廊下側の1番後ろの席である。 「高木さんは?」と聞くと「私は、真ん中の列の1番前」と答える高木さん。 「そっか」という西片くんに「結構はなれちゃったね」と目線を前に向けたまま真顔で言う高木さん。 そのまま「じゃあね」と言った高木さんは机を持って新しい席に移動していってしまい、西片くんはそれをただじっと見つめていた。 他のクラスメイトも移動を始め、ユカリの後ろになったミナは「テストの時、答え教えてねユカリちゃん」と言うが、「それ、普通にカンニングだから」とユカリに言われてしまう。 「助け合いだよー!」と反論するミナに、ユカリが「普段は何助けてもらうのよ」と聞くと「応援するよ、後ろから」といつも通りにミナが答えるので「あぁ」としか言えなくなってしまう。 西片くんは机を運んでいる時に中井くんとすれ違う。 お互い、近くではないことが分かり「近くだったらよかったのになー」と中井くんに言われ「そうだね」と同意する西片くん。 すれ違いざまに中井くんの机の端が高木さんのハンカチの入っている西片くんのポケットに触れて、西片くんはハンカチのことを思い出す。 中井くんの席は、先程まで西片くんが座っていた席のようで「俺、最近視力落ちてるから。 黒板見れるか不安だなぁ」とぼやいていた。 そんな中井くんを背にして、自分の新しい席に机を移動させた西片くんの目の前には、机に突っ伏し、沈んだ様子の真野ちゃんの姿があった。
次のあなたと一緒に暮らしていくことが出来ない。 それがわかった日に、この手紙を書き始めました。 あなたと出会い、 一緒に時間を送る中で、 あなたはたくさんの笑顔をくれました。 あなたも笑顔でいてくれたでしょうか? 私がからかうたびに、 ムキになって、 私をからかおうとしたあなた。 何かあるとすぐに勝負を挑んできて、 負けると素敵な反応を見せてくれたあなた。 こんなに長く一緒にいて、 結局一度も勝てなかったなー、 あの日、あなたは言ったけど、 きっとそれは気づいていないだけ。 何度も私は あなたによって 喜んだり 胸がしめつけられたり 幸せを感じたりしていました。 いつも素直に伝えられなくてごめんね。 私は幸せだったよ。 本当に……幸せだったよ? あなたとした2人乗り あなたと一緒に手を繋いだ帰り道 あなたと一緒に行ったプール いつの話をしてるの、 と言われそうですが あなたと過ごした普通の日々が 私にとっては忘れられない思い出です。 あなたはこの家を出ていく。 もう一緒に暮らせない。 そうであっても みんなが笑っているのは いつものことだから、 あなたはあなたの大切な人と、 あなたの夢を イイ夢にしていってね。 ちー、結婚おめでとう。
次の恋のきっかけ 西片が遅刻した理由は、落ちてたハンカチを職員室に届けていたからでした。 そしてそのハンカチは皆様の想像通り、高木さんのハンカチだったのです。 遅刻してまでハンカチを職員室に届けてくれた西片の優しさに、高木さんの恋は始まるのでした。 それにしても、きっかけは本当に些細なことから始まりますよね。 このハンカチは後にも二人の架け橋として大活躍しています。 高木さんが西片を好きな理由1 ノリの良い西片 毎日毎日かわかわれても飽きること無く付き合ってくれる西片。 高木さんとしては西片と話すきっかけの一つでもありますし、愛情表現のひとつなので、からかいを拒絶されることは死活問題となります、なのでいつまでも変わらずからかわれてくれる西片は最高に愛おしいんでしょう。 高木さんが西片を好きな理由2 からかわれ上手な面 高木さんのからかいに対して、高木さんが期待してる通り、もしくはそれ以上の反応を示してくれて、やってる側としてはこの上ない喜びですよね。 高木さん的にはそんなかわいい西片のリアクションも大好きな理由ですので、その顔が見たくてついつい沢山からかってしまうんですよね。 高木さんが西片を好きな理由3 優しい面 ハンカチの件もそうですし、毎日毎日からかっても嫌がらないところもそうですし、総合的に見て西片はかなり優しい男の子ですよね。 からかいの仕返しはしようとはしますが、決してただ傷つけるだけの言動や行動は取りませんし、そういう性格も高木さん的にはどストライクだったんでしょうね。 高木さんが西片を好きな理由4 期待に答えてくれる まぁ、高木さんの手腕があってのことですが、夏休み中も何かと理由付けすれば会ってくれますし、休日のお買い物にも付き合ってくれます。 ちょっと見方を間違ったら都合いい男の子に見えてしまうかもですが、違いますよ、高木さんの期待に答えてるだけです。 というか、期待通りになるように誘導されてるんですけど(笑)まぁ、やっぱそんな西片だから好きなんでしょう。 とどめのクリティカル そんな大好きな西片が、たまに見せるかっこいいと言うか、高木さん的にはポイント高い行動を取ると、高木さんの恋は更に燃え上がるのでした。 高木さんと一緒に帰りたかったからという言葉や、貸してたハンカチの中に入っていた、ありがとうと書かれた手紙をもらったりすると、高木さんのテンションは爆上がりします。 一見そんなに嬉しい?って思うようなことですが、西片が大好きな高木さんからすると、そういう些細な事がとても大切で嬉しいことなんですよね。 普段は小悪魔高木さんも、実際はかわいい中学生女子っていうのが伝わります。 高木さんが西片を好きな理由まとめ! きっかけは隣の席になって、ハンカチから始まって、そして毎日のからかいを得てますます恋心が加速していく高木さん。 そして、なんやかんやで高木さんに遅れながらも、西片も徐々に高木さんに恋をしていってるのがまた…。 高木さんの努力の甲斐もあって、すっかり西片も高木さんのからかいなしでは生きられない体になってしまって、高木さんの隣の席を死守しようと頑張っちゃいましたからね、そしてそれを見た高木さんは更に西片を好きになるっていうね。 もう付き合っちゃいなよ(笑)そんな二人の青春は必見ですので、是非ご覧になってください、そんな二人がゴールインしたあとの話の、スピンオフ作品(元)高木さんもおすすめです。 それでは、最後までお付き合いありがとございました。
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