チェコ デザイン 100 年 の 旅。 【会期延長しました】チェコ・デザイン 100年の旅|京都国立近代美術館

【会期変更】「チェコ・デザイン100年の旅」展(5/26~7/5、京都国立近代美術館)

チェコ デザイン 100 年 の 旅

1885年に設立され長い歴史を持つプラハ工芸美術館のコレクションから選定された約250点が展示され、チェコという国の激動の100年間をデザインを通して振り返る。 20世紀初頭から現在までを8つの時代に区分し、さらに日本でも人気の高いおもちゃとアニメーションを独立させた合計10章から成り立つ。 本記事では、特定研究員で建築史家の本橋仁氏にチェコデザインの魅力、そして氏がスキームづくりに関わった展示デザインについてお話を伺った(本展は昨年、岡崎市美術博物館、富山県美術館、世田谷美術館で開催された同名の展覧会の巡回展です)。 この木製フレームが、ときにパーテーションとして、またガラスケース内の作品を枠取りながら、会場全体を構成しているのは京都展だけのアレンジだ。 会場構成のスキームづくりに関わった本橋氏は、デザイン展における作品と会場デザインのデザイン的調和の是非はきっちりと問うべきだと語る。 「通常、絵画や彫刻を扱う展覧会では、作品と展示デザイン(キャプションやパネルを含めて)は、その性質が全く異なりますが、デザインが主題の展覧会では、展示されたデザイン=作品と展示のためのデザインの位置付けに整理が必要になります。 「この展覧会では、モジュールをもったフレームと、そこに入る種々のインフォメーションとがシステムを組み、さらにそこに家具などの作品が展示されていました。 そういうつながりも意識しつつ、今回の展覧会の会場構成に適用しています」。 さらにコストを抑えるため、普段積極的には使われない既存の可動壁を、作品展示のために用いるなどさまざまな工夫が凝らされている。 結果的に、木製フレームと既存パーテーションのモジュールの違いによって隙間や余白が生まれ、それを「ズレ」として残すことで、思わぬ視線の抜けが生まれるなどの効果を生み出しているのが面白い。 他にも京都会場独自の試みとして、各章の始まりにはその時代を代表するものとして椅子が置かれている。 「椅子はその時代の技術とフォルムを一目で認識することができます。 また、フォルムが抽象化されたシルエットの美しさも楽しんでもらいたいです」。 スロバキアと分離し、現在のチェコ共和国ができたのも最近です。 チェコ独自の民族意識と近代国家たらんとする動きが交錯するところが面白いと思います」。 2章で取り上げられているチェコ・キュビズムは、ウィーン分離派の幾何学的なデザインに、パリから持ち込まれたキュビズムが融合して生まれた。 キュビズムが建築や家具にまで展開し、生活空間全体へと応用され、チェコ独自のモダニズム運動として評価されている。 パヴェル・ヤナーク《クリスタル(結晶)型小物入れ》(1911年) モダニズムは基本的に国際的な志向性を持っているが、チェコスロヴァキアという独立間もない国において、チェコ独自のデザイン様式を確立するという意識もあったとされている。 そのため、続く3章では、1920年代になるとキュビズムの作家たちが民族的パターンを取り入れたロンド・キュビズムへと容易に変容していく様子が紹介されている。 工業化と機能主義が趨勢となるまた1930年代、ナチスに侵略された反動で再び民族主義が濃くなる1940年というように、モダニズムとナショナリズムの間で揺れ動きながらデザインが展開する。 こうした展開はチェコだけに限ったことではなく、日本にも重ねることができると本橋氏。 インターナショナルなモダニズムと民族的な表現を求めるナショナリズムの間で揺れ動くその様子は、そのまま日本におけるデザインの展開とも比較できて興味深いです」。 ちなみにアントニン・レーモンド自身や、原爆ドームを設計をしたヤン・レッツェル(Jan Letzel, 1880 — 1925)もチェコ出身だ。 逆に日本からチェコへのジャポニズムの影響など、チェコと日本の結びつきを見つけたり、相互に時代状況を比較してみることで、展覧会をより深く味わくことができるだろう。 パヴェル・ヤナーク《小物入れ》(1920年頃)と《花瓶》(1927年頃) 注目の作家、そしてこれからの展覧会の楽しみ方 さて、数多くの作家が紹介されている本展だが、その中で本橋氏が注目しているのがラジスラフ・ストナル(Ladislav Sutnar、1897-1976)だ。 「1930年代のチェコは工業化、そして機能主義の時代でした。 ストナルはその初代ディレクターを務めた人。 もともと数学を学び、その後グラフィックデザイナーとして活躍した珍しい経歴です。 第二次大戦後はアメリカに渡り、インフォグラフィックの分野で功績を残しました」。 ストナル自身がグラフィックデザインを手がけた「美しい部屋」の広告冊子なども見ることができる。 こうしたプロダクトは広く中産階級の家庭で使われていたものであり、博覧会などに出品されていたような高価で特別なものだけでない。

次の

「チェコ・デザイン 100年の旅」展覧会公式図録

チェコ デザイン 100 年 の 旅

春の京都国立近代美術館で「チェコ・デザイン 100年の旅」が開催されます。 芸術家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)が生まれ、またフランス絵画から影響を受けたチェコ・キュビズムと呼ばれる独自の様式を生み出したチェコ。 さらにアニメやおもちゃに至るまで、20世紀のチェコは世界を魅了する数々のデザインを生み出した国として知られています。 しかし、その100 年を振り返れば、戦争や占領、そして政変といった刻々と変わる国家の情勢にデザイナーたちが翻弄された世紀でもありました。 本展では、チェコ・デザインの100年を家具やプロダクト、ポスターなど、チェコ国立プラハ工芸美術館所蔵の作品を中心とした約250点の作品により紹介しています。 チェコ・デザインのめざましい進化や発展を感じて頂けるでしょう。 是非この機会に、「チェコ・デザイン 100年の旅」をご覧ください。 アルフォンス・ミュシャ 《ジスモンダ》 1894 年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 19世紀後半から20世紀初頭にかけて最も特徴的な装飾の様式といえば、ヨーロッパのアール・ヌーヴォー様式でしょう。 生き生きとした自然界のイメージや仕組みを源泉とした様式で、建築と工芸に全く新しい局面をもたらしました。 たびたび登場する繁栄、成長、開花のモチーフは、当時の若者の熱狂や、解放を求める動きと呼応して、さまざまな商品、建築インテリア、ファッション、本の装丁、広告に用いられていきました。 また新しい素材による視覚的効果を用いて、アール・ヌー ヴォーは美術工芸品だけでなく工場で作られる日用品に も見られるようになっていきます。 なかでも、最も成功したの はアルフォンス・ミュシャ(ムハ)で、彼はアール・ヌーヴォー 様式の装飾を独自のコンセプトに作り替え、並外れた人気を博していきます。 パヴェル・ヤナーク 《クリスタル(結晶)型小物入れ》 1911年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 チェコではアール・ヌーヴォーの影響が長く続くなか、幾何学的な形に単純化した独自の様式も生み出していきます。 この変化のきっかけとなったのが、1905年頃にはすでに存在感を発揮していたオーストリアの建築家オットー・ワーグナーの生徒によるウィーン分離派の幾何学的な作品と、ウィーン工房の影響を受けて制作された工芸品の存在でした。 幾何学への志向が表われたのは、まず本の装丁とグラフィック・デザインにおいて でした。 これは、ある意味キュビスムの前兆として捉えられており、応用芸術や建築の形にまで 影響を及ぼしたチェコ・キュビズムと呼ばれ、ヨーロッパでは他に類を見ない様式を生み出します。 このような芸術的な発展は第一次世界大戦によって中断されたものの、キュビスムの遺産は、ロンド(円弧の)・キュビスムの装飾様式や、グラフィック・デザインや本の装丁などに受け継がれていきました。 ラジスラフ・ストナル 《耐熱ガラスのティーセット》 1931年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 機能主義の理念は、1920年代に徐々に広がりを見せはじめます。 少量生産である手工芸品にとって代わり標準化された工業製品が普及しました。 流行の変化によって製品寿命を短くする装飾から解放された機能的な形が求められ、それとともにデザインと素材の品質、そして人間工学および衛生的要求の充足が図られはじめます。 チェコスロヴァキアの実用品のデザインにおいて、機能主義の原則を実現する起点となったのは、住居に関する啓蒙活動や生産販売を行っていた組織「美しい部屋」(クラースナー・イズバ)でした。 この組織が注力した工業生産の方向づけを行ったのは 1929年以降「美しい部屋」のアートディレクターを務めた中心デザイナーの一人、ラジスラフ・ストナルです。 このようなデザイナーと産業との結びつきと素材の革新により、 食卓を洗練されたものにする多様な食器セットなどが作られていきます。 イジー・シュハーイェク 《花瓶<四季>シリーズより》 1999年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 国境を開いた1989年のビロード革命はチェコスロヴァキアに自由と民主主義をもたら しました。 中央集権的組織は徐々に閉鎖され、国営企業は民営化されます。 しかし、民営化は多くの場合、破綻を導く結果ともなりました。 今まで東側の市場向けだった 輸出商品は、西側でも新しく競争力をもたなければならなくなったのです。 1990年代前半には新たな民主主義体制を代表する様式として、ポストモダンが新たな役割を獲得していきました。 ポストモダンは次第にネオモダニズム(または新機能主義)に置き換えられていきましたが、そこにはチェコ・デザインの特異性と栄光、そして1930年代の機能主義の応用美術との結びつきの再現が見られます。 1999年以降、最先端のデザインを俯瞰するイベントとして毎年開催されている「デザインブロック」や、2006 年に始まった、それぞれの分野の制作者に贈られる年間賞である 「チェコ・グランドデザイン」な ど、チェコにおけるデザ インの社会的意義が 見直されています。 ヴァーツラフ・シュパーラ 《小箱《悪魔》》 1921 年 チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 チェコのおもちゃ作りの伝統は古く、元来は一般民衆の手作り品を起源とし、19世紀 に木材加工の副産物として発展していきました。 20世紀に入ってもなお、おもちゃの生産は続けられますが、社会の変化に応じて変化を遂げ、モダニズムの運動により写実的であることよりも、抽象的な傾向がみられるようになります。 チェコにおける「おもちゃ」作りにおいて、何よりも重要だったのは、子どもの空想を支え、それにより子どもの創造性も支えるということでした。 アール・ヌーヴォー様式の美しい装飾美術から、チェコ・キュビスムの幾何学的なモダンな様式、さらに洗練されたモダンで実用的な様式など、様々な変遷を経て、チェコの芸術は美術作品だけでなく、日常生活における食器や家具、ポスター、アクセサリーやおもちゃなど様々なものに影響を与えていました。 洗練された美しいデザイン、色彩、素材、フォルムなど、「チェコ・デザイン 100年の旅」を是非、お愉しみください。 京都国立近代美術館ホームページ: 会場:京都国立近代美術館[岡崎公園内] 開館時間:9時30分—17時(金曜、土曜は20時まで)ただし、入館は閉館の30分前まで 休館日:毎週月曜日(ただし5月4日 [月・祝]は開館) 観覧料:一般1,400(1,200)円、大学生1,000(800)円、高校生500(300)円 *( )内は、20名以上の団体料金 *中学生以下、心身に障がいがある方とその付添者 1名は無料(要証明) *本展の観覧券でコレクション展もご覧いただけます お問い合わせ:075-761-4111 京都国立近代美術館ホームページ: 主催:京都国立近代美術館、読売新聞社、チェコ国立プラハ工芸美術館 後援:駐日チェコ共和国大使館、チェコセンター東京 協賛:ルフトハンザ カーゴ AG 企画協力:株式会社イデッフ 「チェコ・デザイン 100年の旅」@京都シネフィルチケットプレゼント 下記の必要事項をご記入の上、コートールド美術館展 魅惑の印象派 神戸 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。 抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。 記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。 チケットの転売は禁止です。 tokyo *応募締め切りは2020年4月13日 月曜日 24:00 記載内容 1、氏名 2、年齢 3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記) 建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、 当選無効となります。 4、ご連絡先メールアドレス、電話番号 5、記事を読んでみたい監督、俳優名、アーティスト名 6、読んでみたい執筆者 7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、 5つ以上ご記入下さい(複数回答可) 8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい (複数回答可) 9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。 10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。 また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

次の

『チェコ・デザイン 100年の旅』

チェコ デザイン 100 年 の 旅

1885年に設立され長い歴史を持つプラハ工芸美術館のコレクションから選定された約250点が展示され、チェコという国の激動の100年間をデザインを通して振り返る。 20世紀初頭から現在までを8つの時代に区分し、さらに日本でも人気の高いおもちゃとアニメーションを独立させた合計10章から成り立つ。 本記事では、特定研究員で建築史家の本橋仁氏にチェコデザインの魅力、そして氏がスキームづくりに関わった展示デザインについてお話を伺った(本展は昨年、岡崎市美術博物館、富山県美術館、世田谷美術館で開催された同名の展覧会の巡回展です)。 この木製フレームが、ときにパーテーションとして、またガラスケース内の作品を枠取りながら、会場全体を構成しているのは京都展だけのアレンジだ。 会場構成のスキームづくりに関わった本橋氏は、デザイン展における作品と会場デザインのデザイン的調和の是非はきっちりと問うべきだと語る。 「通常、絵画や彫刻を扱う展覧会では、作品と展示デザイン(キャプションやパネルを含めて)は、その性質が全く異なりますが、デザインが主題の展覧会では、展示されたデザイン=作品と展示のためのデザインの位置付けに整理が必要になります。 「この展覧会では、モジュールをもったフレームと、そこに入る種々のインフォメーションとがシステムを組み、さらにそこに家具などの作品が展示されていました。 そういうつながりも意識しつつ、今回の展覧会の会場構成に適用しています」。 さらにコストを抑えるため、普段積極的には使われない既存の可動壁を、作品展示のために用いるなどさまざまな工夫が凝らされている。 結果的に、木製フレームと既存パーテーションのモジュールの違いによって隙間や余白が生まれ、それを「ズレ」として残すことで、思わぬ視線の抜けが生まれるなどの効果を生み出しているのが面白い。 他にも京都会場独自の試みとして、各章の始まりにはその時代を代表するものとして椅子が置かれている。 「椅子はその時代の技術とフォルムを一目で認識することができます。 また、フォルムが抽象化されたシルエットの美しさも楽しんでもらいたいです」。 スロバキアと分離し、現在のチェコ共和国ができたのも最近です。 チェコ独自の民族意識と近代国家たらんとする動きが交錯するところが面白いと思います」。 2章で取り上げられているチェコ・キュビズムは、ウィーン分離派の幾何学的なデザインに、パリから持ち込まれたキュビズムが融合して生まれた。 キュビズムが建築や家具にまで展開し、生活空間全体へと応用され、チェコ独自のモダニズム運動として評価されている。 パヴェル・ヤナーク《クリスタル(結晶)型小物入れ》(1911年) モダニズムは基本的に国際的な志向性を持っているが、チェコスロヴァキアという独立間もない国において、チェコ独自のデザイン様式を確立するという意識もあったとされている。 そのため、続く3章では、1920年代になるとキュビズムの作家たちが民族的パターンを取り入れたロンド・キュビズムへと容易に変容していく様子が紹介されている。 工業化と機能主義が趨勢となるまた1930年代、ナチスに侵略された反動で再び民族主義が濃くなる1940年というように、モダニズムとナショナリズムの間で揺れ動きながらデザインが展開する。 こうした展開はチェコだけに限ったことではなく、日本にも重ねることができると本橋氏。 インターナショナルなモダニズムと民族的な表現を求めるナショナリズムの間で揺れ動くその様子は、そのまま日本におけるデザインの展開とも比較できて興味深いです」。 ちなみにアントニン・レーモンド自身や、原爆ドームを設計をしたヤン・レッツェル(Jan Letzel, 1880 — 1925)もチェコ出身だ。 逆に日本からチェコへのジャポニズムの影響など、チェコと日本の結びつきを見つけたり、相互に時代状況を比較してみることで、展覧会をより深く味わくことができるだろう。 パヴェル・ヤナーク《小物入れ》(1920年頃)と《花瓶》(1927年頃) 注目の作家、そしてこれからの展覧会の楽しみ方 さて、数多くの作家が紹介されている本展だが、その中で本橋氏が注目しているのがラジスラフ・ストナル(Ladislav Sutnar、1897-1976)だ。 「1930年代のチェコは工業化、そして機能主義の時代でした。 ストナルはその初代ディレクターを務めた人。 もともと数学を学び、その後グラフィックデザイナーとして活躍した珍しい経歴です。 第二次大戦後はアメリカに渡り、インフォグラフィックの分野で功績を残しました」。 ストナル自身がグラフィックデザインを手がけた「美しい部屋」の広告冊子なども見ることができる。 こうしたプロダクトは広く中産階級の家庭で使われていたものであり、博覧会などに出品されていたような高価で特別なものだけでない。

次の