リーマン トリロジー。 山猫か、イモか~NTライヴ『リーマン・トリロジー』(ネタバレあり)

『リーマン・トリロジー』

リーマン トリロジー

ナショナル・シアター・ライブ『リーマン・トリロジー』を観ました。 2008年に起こった「リーマンショック」。 創業家一族の三世代を中心に、3人の役者とピアニストで進む物語。 演出は、映画でも活躍する、米国アカデミー賞・監督賞の受賞歴もあるサム・メンデス。 「人間らしさ」とは? 演出のサム・メンデスは、「この作品は詩的であり、人間らしさを感じさせる作品である」、とコメントしている。 舞台の円環構造(最初と最後が繋がる構造)や、3世代に渡って現れる悪夢。 時代が進むに連れ、最新の「トレンド」を理解しようとしてもできない苦しみ。 作中では、様々な年代の方々が登場するので、年の重ね方を実際に目の当たりにすることができた。 時代が変わっても、変わらない「人間らしさ」って何だろう?私が感じたのは、「好奇心」だった。 知らない、が突き動かす思いこそが、人間を人間たらしめるのではないだろうかと感じた。 そう考えると、人生において「運」って非常に大事だと思った。 生まれた場所、環境、時代。 自分が生きているときに運を掴み、チャンスを生かすも殺すも自分次第。 改めて、今の「時間」がどれだけ貴重かを学んだ。 その中で、演出のサム・メンデスが「音楽は驚異的なスピードで物語を進める力がある」と言っていたのが非常に印象的だった。 ミュージカルから舞台観劇を好きになった私は、今作品で音楽の持つエネルギーを理解することができた。 音楽は物語を彩り、ストーリーを進める力がある。 だからこそ、海外でミュージカルを見ても音楽が持つ雰囲気で「雰囲気」を感じることができたし、言葉が分からなくても楽しむことができたのだと改めてその凄さを感じた。 状況説明と台詞の「間」 作中は、3人で老若男女を演じるのだが、その演技力が素晴らしい。 また、3人しかいないからこそ、その人数で「状況説明」と「台詞」、加えて「演じる人物の切り替え」が必要になる。 この切り替えが凄かった。 役者の底力を感じた。 また、単なる会話劇でなく、3時間ある作品を飽きさせない工夫として、台詞同士の「間」がテンポ良く進んでいく。 そのため、お芝居を集中して見ることができた。 加えて、休憩時間に写されるロンドンの客席は、懐かしく羨ましかったので、絶対にまた行きたい。

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サム・メンデス、『リーマン・トリロジー』のインタビュー映像が公開 「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)」

リーマン トリロジー

どもどもケイです。 話題作リーマン・トリロジーを見てきたので感想を残しておきたい。 3人称の演劇 壮大なドラマと聞いていたので、ドキドキして行ったが、静かで染みるような語りが全編において続く不思議な味わいの劇だった。 元がイタリアのネットドラマということもあるのだろう。 登場人物を演じる3人は、「彼は怒った」「彼は夢を見るようになった」「彼はまた勝負に勝った」と自分が演じる人物たちについて3人称のナレーション形式で物語を進めていく。 テレビドラマだとナレーションで、マンガだとト書きで、小説だと地の文で、演劇だと他の人が、と3人称はもちろん本人以外が説明するから3人称と言われているのだ。 これを本人を演じながら、台詞としては3人称という絶妙な距離感が全編にわたって続いていくので、隙なく編集された再現ドラマを見ているような不思議な感覚だった。 しかもそれがライブで、3人で演じているのだ。 瞬間を切り取った演技 最初にああすごいな、とため息をついたのが、サイモン・ラッセル・ビールが港に降り立ったシーン。 リーマン・ショックのみすぼらしく丸めた背中から、コンマ何秒かはけて戻ってきた冒頭の部分だ。 「彼は港に降り立った」と言いながら、カバンを持っている。 背景の映像が、マンハッタンのビル群から海へと切り替わってはいたが、ほとんどオフィスのセットのままだ。 でも、観客の目には朝もやがかかる港が見えたと思う。 そしてそれ以上に、アメリカに降り立ったヘンリー・リーマンの胸の高まりが、くっきりと見て取れたと思う。 ハヤム・レーマンからヘンリー・リーマンへの変わる瞬間を背の高い港の職員とヘンリー自身の落語形式でさっと演じた後で、「アメリカでは全てが変わる」と説明し、しかしその間も高揚しているヘンリーの様子は伝えたままで・・・ 役者は専門職だし、才に恵まれた技術を極めた人が演じる作品を見られるのは幸せだなぁと今回も思った。 緻密な生きるメディア 緻密な計算と、長尺全編で役者が演じきるのを見て、幕が降りた瞬間にほーと感嘆の気持ちにならざるを得なかった。 「ライブなの?これ?」こんなものを生の舞台で実現しようと企画して、それを作りきるのかと思った。 年末年始にロンドンに行って感じたことだが、イギリスのプロダクションは作り込みが複雑だと思っている(主語がでかい。 出はけや照明・音響・セットの切り替えのタイミング、小道具や役者の動き、そして違和感を無くやってのける役者の技量・・・ 事前のワークショップの膨大な手間暇を感じるし、「舞台」という概念が自分の持っているものとは全然違うのだなということを実感した。 なんというか、板の上で演じられる物語というよりも、緻密な生きるメディアとして捉えている気がする。 繊細に作り込まれた伝統工芸品で、かつ最先端なのだ。 今回も印刷用の紙が入った箱が、階段になり、受付になり、お立ち台になり、、、どうやって組み立てたのだろうかと思う。 サイモン・ラッセル・ビール可愛い 同じ1幕のマイヤー・リーマンが、ポーリーン・ソンドハイムに求婚するシーン。 間に挟まったサイモン・ラッセル・ビールがすごくキュートな表情で2人を見比べていて、誰だろう?(お父さんにしては可愛い・・・)と思っていたら、メイドさんでしたね。 子供役など可愛らしさが前面に出るので、観客も毎回可愛いかよ・・・の笑いが起きていた(主観。 そこから子供フィリップと大人フィリップの演じ分けまで一気に突っ走って可愛いだけじゃないのがなんというか、匠の技。 前回はシェイクスピア劇だったので、今回との対比も面白かった。 背景映像と音響・照明効果 3人芝居、オフィスのみとシンプルな構成の作品なので、効果もシンプルなのかと(勝手に)思っていたが、むしろ効果てんこ盛りなのも印象的だった。 モンゴメリの小さな町では馬車の音や馬のいななきが聞こえ、ニューヨークのひそひそ声や、列車の轟音など、積極的に風景を描く音も多かった。 また、会社が大きくなるのをビルの高さが伝わる背景映像で表現していたり、証券取引の映像がツイストしていく最後のシーンは楽しいのに気持ち悪いのが視覚的にも伝わってきた。 照明についても、使っている部屋だけスポットライトを当てる、背景映像の空気感を延長するように舞台上に表現されていたと思う。 メタファー天丼 チェス・ザ・ミュージカルで、脚本がアレだとどんなに素晴らしい演出でも、モヤモヤするということを学んだ。 リーマン一族を通じて資本主義を描き出す題材自体ももうなんか目の付け所がシャープだね!(突然の企業広告、という感じだが、会社の発展や社会情勢を毎回何かに例えるのが!最高すぎないか! リーマン・ブラザーズの発展をカードゲームに、アメリカ大恐慌前の熱狂を綱渡りに、経済再建をノアの箱船に、サブプライムローンの加熱をツイスト・ダンスに。 当時の出来事でメタファーを匂わせて、そのまま説明に入っていく手法。 しかも天丼。 オタクの好きなやつやー!となった。 個人的にはリーマン・ショックの余波で人生しんどくなってしまった人が周りにたくさんいる世代なので(世界中がそうなのだとは思うが、現代に近づくにつれて配慮されて絶望的な表現や直接的な出来事を挙げることがなかったのも、観ていて胸をなでおろすというか、辛くならない作品でよかったなと思った。 for meなのか? 前評判通りでホクホクしたところと、理系寄りで感情にゴリゴリ訴える作品ではなかったので物足りない部分が同居した感じだった。 あと、歴史や経済の勉強になった。 15年くらい前に観ていたら、生き方が変わったかもしれないくらい、わかりやすかった(リーマンショック起こっていないけど。 とはいえ、演劇の完成形の1つだと思うし、経済の話で実用的なので万人に勧めやすいと思った(布教のチャンスだ! ピアノの話や、壁に描かれたサインたちの話など、語り足りないがこの辺で!.

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リーマン・トリロジー: Ume

リーマン トリロジー

National Theater Live は英国ナショナルシアターが厳選した、世界で観られるべき傑作舞台を各国の映画館で上映する画期的なプロジェクトです。 ちょうど時を同じくして公開が開始された「1917」のサム・メンデスが演出を手がける舞台。 この作品はマストで観たいと思っていましたし、NTLで劇場公開されると知った時は奇声を上げて喜びました。 思いっきり個人的な話ですが、リーマン・ブラザーズの歴史には興味はありません。 リーマンショックの名前の元でサブプライムローン焦げ付かせて大破綻した会社という認識でしかありません。 また演者も格別推しがいるというわけではありません。 キャストで顔にピンと来たのもAdam Godleyのみです。 ではなぜ絶対観る候補に上げていたかというと、このリーマントリロジーは2年前の秋にロンドンのNational Theaterを訪れた際に公演されていたからです。 その時は無計画に建物を観に行こうとだけ思って訪れたため事前にチケットも買っておらず、 公演内容も知りませんでしたが、「綱渡りする男」のポスタービジュアルに何故か魅了され(NTLで公開されたら絶対に観に行くぞ…)と心に決めたのでした。 さてそんな思い出補正だけで観に行ったリーマントリロジーですが、4時間と2回の休憩という長丁場にも関わらずあっという間に感じられる面白さでした。 NTL作品の舞台演出には特に毎回唸らされるのですが(「コリオレイナス」の椅子や「夜中に犬に起こった奇妙な事件」の床など)今回の舞台も見事でした。 枠とガラスによって囲われたオフィスが場面によってアラバマの積荷だらけの小商店に見えたり、会議机が表彰台に見えたりと想像力をさまざまなシーンで掻き立ててくれます。 見どころはそれぞれのシーンにおける演者の切り替わりの素晴らしさです。 ある時は幼い少年、ある時は引退した経営者、ある時は数種類の女性像を瞬時に切り替えたり…3人の演者の才能が如何なく発揮されていておかしいやら可愛らしいやら。 今年の目標はNTL制覇といこうかな。 超長編ですがまた観たくなる作品でした。

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