伊之助 あおい。 悠木碧

【名言まとめ】鬼滅の刃にハマる理由!名言・珍言にあふれた名作漫画だった!

伊之助 あおい

[chapter:幸せのクローバー] 「はぁー……」 先程から長嘆息を漏らす少女がいる。 思い悩んでいる姿に心配したカナヲは声をかけた。 「アオイ、どうしたの……?」 「カナヲ?」 「何かあった?……私で良ければ聞くよ」 以前に比べて、随分と心を開いて話をしてくれるようになったカナヲが、自分を心配して声をかけてくれた事に驚いたのと、カナヲの優しい気持ちが伝わって、アオイは嬉しくなった。 「ありがとうカナヲ。 実は、伊之助さんを怒らせてしまったみたいで……だけど、怒ってる理由がわからないの」 「伊之助?」 アオイの悩みの種は、何時も屋敷中を走り回って騒いでいる伊之助の事だった。 「その……いつもの口喧嘩では、なくて?」 アオイと伊之助は、よく口喧嘩をしている。 喧嘩と言っても伊之助の悪戯にアオイが注意をして、それに伊之助が反発して言い合いをしている程度。 蝶屋敷でのいつもの光景だ。 「違うの、完全に無視されてるの……。 こんなこと、初めてで……原因もわからないから、どうしていいか……」 微かに声を震わしながら、そう言ったアオイの瞳から涙がポタポタと零れている。 その姿に驚いたカナヲは、そっとアオイの頭に手をのせて、ゆっくりと頭を撫でた。 「伊之助と最後に、どんな会話をしたか教えて?一緒に考える」 「カナヲ……ありがとう……。 今朝の事なんだけど……」 * 今朝、屋敷前を箒で掃いていた時、見知らぬ女性から声をかけられた。 『すみません。 こちらに炭治郎さんがいらっしゃると伺ったのですが、お会いできますか?』 『炭治郎さんですか?今は出掛けている為、留守ですが……』 任務の為、炭治郎は早朝に出発をしていて、屋敷を留守にしている。 町から訪ねて来た女性なのか、綺麗な着物を羽織って、お化粧までしている。 女性の姿を見て、自分とは違うな、と思いながらアオイは、尋ねた。 『炭治郎さんに、ご用ですか?数日は帰ってこないと思います。 伝言があれば、私からお伝えいたします』 『ありがとうございます。 先日、炭治郎さんに助けて頂いてそのお礼をと思いまして。 よろしければ、こちらを炭治郎さんにお渡し頂けますでしょうか?』 女性は綺麗な包み紙の箱をアオイに渡して『また来ます』と言い残し屋敷を後にした。 (きっとあの女性は、炭治郎さんに好意を抱いてるのね。 本当に炭治郎さんは……) 女性の後ろ姿を、眺めながらアオイは心で思った。 * 「……ねぇ、アオイ。 その……女性と炭治郎は……」 女性とのやり取りの話をした後、隣で静かに話を聞いていたカナヲの顔が、真っ青になっているのに気づいたアオイは慌てだす。 「ち、違うからね、カナヲ!その女性が、一方的に炭治郎さんに会いに来ただけよ。 ほら、炭治郎さんどんな人にも優しいじゃない?」 「……うん。 炭治郎は優しい。 ……それと伊之助が関係あるの?」 「あ、そうよね。 ごめんね。 それで、その後に……」 本当に炭治郎は罪深い人だと思いながら、話の続きを始めた。 * 女性が屋敷を後にした直ぐに、大声で何かを叫びながら勢いよく猪頭がアオイに向かってドドドッと走って来た。 『猪突猛進!伊之助様のお通りじゃアアア!!』 アオイが手に持っている包み紙の箱が気になった伊之助は、地面を飛び跳ねながら、アオイに声をかけた。 『アオコ!何持ってんだ?食いもんか!?』 『伊之助さん、何でもかんでも食べ物と思わないで下さい。 それにこれは、炭治郎さんへの贈り物です』 『なんで健太郎なんだ?』 『先刻、女性がいらっしゃって炭治郎さんに助けて頂いたお礼と仰っておりました。 なのでこれは、炭治郎さんのです』 『助けられただけで、わざわざ礼言いに来るもんなのか?』 『それは……女性にとっては感謝する程嬉しかったのと、炭治郎さんに会いたいからお越しになられたんじゃないんですか。 ……炭治郎さんは、おモテになられるようですし』 『あいつモテるんか!!』 炭治郎の優しさに惚れる女性はいるだろう。 少なからず蝶屋敷にも一人、炭治郎に恋をしている乙女がいる。 『そうですね。 炭治郎さんは真っ直ぐで、強くて優しい方ですし、好く気持ちもわからなくはないです』 『……お前も炭治郎がいいのか?』 『え?まぁ……別に私は……』 『…………猪突猛進!!』 伊之助は、それ以上何も言わずそのまま走って屋敷を出て行ってしまった。 * 「……これが伊之助さんとの最後の会話。 その後、屋敷に戻って来られて、話かけても無視されるの」 話を聞き終えたカナヲは、俯きながらアオイに問う。 その声は、かすかに震えている。 「……アオイは……炭治郎のこと、好き、なの?」 「え!?なに言ってるのカナヲ!炭治郎さんの事は、人として尊敬しているけど、異性としては何も思ってないわよ!」 カナヲが何故、自分が炭治郎に好意を持っていると勘違いしたのかが解らない。 ああ……どうしよう。 カナヲを不安な気持ちにさせてしまった…… 「今の話を聞くと、アオイは炭治郎のこと想ってるのかな…って思ったの……」 「カナヲ?安心して!私が想ってるのは、伊之助さんだから!」 カナヲは瞳を見開いて驚いた。 初めてアオイの口から伊之助への気持ちを知って、顔を真っ赤にしているアオイが可愛いと思ってしまった。 「ねぇ、アオイ。 伊之助も私みたいに勘違い?したんじゃないのかな?」 「……勘違い?」 「アオイが炭治郎を好きって、勘違い」 「勘違いしたとしても、怒る理由にはならないでしょ」 「うーん……。 うまく言えないけど、もし炭治郎が他の女性のこと好きって知ったら……その場から逃げ出したくなるかも。 それにどんな顔して話したらいいか……わからなくなるかも。 だから伊之助も怒ってるんじゃなくて……」 「カナヲ……?」 「伊之助、悲しかったのかもしれない。 アオイから伊之助に理由を聞いた方がいい。 アオイ頑張って」 伊之助さんが、悲しい? カナヲがどう感じてそう思ったのかはわからないけど、私の為に一生懸命考えてくれた事が嬉しい。 カナヲの言う通り、悩んでるだけだと前に進まない。 行動しないといけない。 「カナヲありがとう。 伊之助さんに理由を聞いてみるね。 それともう少し自分の気持ちにも、素直になれるようになるね」 アオイの言葉を聞いて、カナヲの表情も明るくなって、ニコリと微笑んだ。 「話を聞いて下さい!伊之助さん」 「……(逃亡)」 何度話かけても、伊之助は直ぐに何処かに走っていなくなる。 そんな二人の姿を心配するカナヲと蝶屋敷の三人娘。 「伊之助……」 「アオイさんと伊之助さん、仲直りできるといいですね」 * 「お前、アオイちゃんと喧嘩してるの?」 「うるせぇぇえ、紋逸!!それよりも鍛えるぞ!」 「勘弁してよぉぉ。 俺、今任務から戻ったばっかりよ?それに炭治郎いないから禰豆子ちゃんに会えないじゃん!そんなのありー!?」 任務から戻った善逸は、禰豆子に会えないショックで嘆いていた。 二人の様子がいつもと違ったため尋ねてみたけれど、伊之助は、話を逸らして鍛えてくると言って一人で山に向かってしまった。 しばらくして、屋敷に伊之助の姿が見えないことに、アオイは気づく。 また伊之助さん、山へ行かれてしまったのかな。 このままずっと話せなかったらどうしよう…… 落ち込んでいるアオイの姿を見たカナヲは、伊之助のいる山へ向かおうと屋敷を出ようとしたとき、師範のしのぶが丁度、屋敷に戻って来た。 カナヲから事情を聞いたしのぶは「あれを持って行きなさい」と指示を出して、カナヲにある物を持たせた。 山に着くと、伊之助は二本の刀を振っていた。 「……伊之助、いた」 「お前も鍛えにきたのか!この親分様が鍛えてやるぞォォ!」 「話があるの。 お願いだから、アオイの話を聞いてあげて」 「…………」 伊之助は何も答えず、刀を振り続けた。 その姿をしばらく眺めていたカナヲは、持ってきた二本の竹刀を一本伊之助に渡した。 「なんだコレ?」 「……これで勝負しよ?私が勝ったらアオイと話をしてあげて」 「……よしわかったァ!!俺が勝ったら俺の言うこと聞けよ!」 「いいよ」 しのぶがカナヲに持たせたのは、竹刀だった。 伊之助のことだから話を聞かないとわかっていたため、勝負をかけるようにカナヲに伝えていたようだ。 二人の真剣勝負が始まった。 カナヲと伊之助が山で勝負をしてる時、蝶屋敷に木箱を背負った少年が戻ってきた。 「たんじろぉぉお!ねずこちゃぁあん!」 炭治郎と禰豆子の足音に気づいた善逸は、大喜びをして二人の元に駆け寄る。 「善逸、ただいま。 皆は?」 何時もは、アオイやなほ達が出迎えてくれるが、珍しく誰も居ないことに炭治郎は不思議に思う。 「それが俺も、今日任務から戻ったばかりで詳しい話は知らないんだけど、伊之助とアオイちゃんが喧嘩してるみたいなんだよ。 それでアオイちゃん今元気がなくて、さっきしのぶさんが戻ってきて女の子たちでパンケーキ作り始めてるんだよ。 多分アオイちゃんを励ます為だと思うんだけどね」 「そうか……喧嘩してるのか。 伊之助は?」 「あいつなら鍛えに山へ行ったよ」 アオイと伊之助の事を聞いた炭治郎は、悲しい気持ちになった。 心配してアオイの様子を見に調理場に向かった。 ふんわりと、甘く美味しそうな匂いがする。 顔を出した炭治郎にすみが気づく。 「あ、炭治郎さん!お帰りなさい」 ただいま、と笑顔で挨拶すると、すみ達は出迎える事が出来なかった事に謝罪をした。 気にしないで、と炭治郎が答えるとなほが「しのぶ様にパンケーキの作り方を教えて頂いて、沢山作ったので炭治郎さんも食べて下さい」と嬉しそうに話した。 アオイさん少し元気は無さそうだけど、パンケーキをしのぶさんに教えてもらって嬉しそうだな。 あれ?カナヲがいない 炭治郎はカナヲがいない事に気づいて、任務に出ているのか質問すると、笑みを浮かべてしのぶが答えた。 「カナヲは任務ではないですよ。 大事な用がある為、しばらく留守にしています。 日が暮れる前には、戻ってくると思いますよ」 大事な用とは、何だろうと思いながら、炭治郎はパンケーキをご馳走になった後、部屋に戻った。 部屋の机の上に"ある物"が置かれているのに気づく。 「伊之助……」 机の上に置かれている物を持って、炭治郎はアオイの所に向かった。 「アオイさん。 二人に何があったのか解りませんが、伊之助はきっと後悔してますよ。 ただ素直じゃない奴だから、アオイさんと話をしたくても話せないんだと思います」 「……炭治郎さんは優しいですね。 任務から戻ってきたばかりで疲れているでしょうに……心配をかけて申し訳ないです」 伊之助とアオイの二人のことを想いながら、眉を下げて優しい瞳で炭治郎は、手に持っていた物をアオイにそっと渡した。 「なんですか?これは?」 「本当は俺から渡す物ではないんですけど。 伊之助、渡してなかったみたいで……アオイさん、伊之助の想いを受け取ってあげて欲しい。 それで答えてあげて欲しいんだ」 アオイの手のひらには、四つ葉のクローバーの押し花のしおりがのっている。 炭治郎曰く、伊之助がアオイの為に四つ葉のクローバーを見つけるまで、ずっと探していたこと。 ようやく見つけたクローバーを、炭治郎に教えてもらいながら押し花のしおりを作っていたこと。 炭治郎が任務に出る前、伊之助から「俺、今日あいつに渡す」と伝えていたこと。 全てアオイを想っての伊之助の行動だった。 炭治郎の話を聞いたアオイは、ようやく伊之助がどうして話してくれなくなったのか理解した。 純粋な彼を傷つけてしまった。 「わ、わたし……伊之助さんを……うわぁぁん!」 アオイはその場で泣き崩れた。 焦った炭治郎は、アオイを慰めながら優しく声をかける。 「アオイさん、自分の気持ちを正直に!頑張って下さい!」 [newpage] 山にいる伊之助とカナヲは、決着がつかず拮抗した戦いになっていた。 紅い空が二人の影を伸ばす。 「イギイイ!お前なかなかやるなー!何でそんな強ぇんだ!」 「伊之助だって。 ……私は、しのぶ姉さん……師範の継子だから」 「どぉありゃアア!お前、俺の子分になれ!」 「遠慮、する」 「はあ゙ぁぁん!?伊之助様が親分なんだぞ! ツヤツヤのドングリの見つけかた教えてやんぞォ!」 「………………」 このままだと埒が明かない為、カナヲは伊之助に提案する。 「伊之助、このままだと日が暮れちゃう。 伊之助の言うこと聞くから、私のお願いも聞いて欲しい」 伊之助は動きを止めて、カナヲの提案に答えた。 「……わかった。 お前がアオイの為に体張ったんだ。 だから、アオイと話する」 「伊之助、ありがとう」 伊之助の言葉を聞いて安心したカナヲは、ふわりと笑った。 「それでハナヲ、俺の言うこと」 「子分になる以外なら、聞く」 「はあ゙ん!?舐めんじゃねぇよコラ!」 伊之助がカナヲに言った願いとは……。 『アオイと、これからも仲良くしろ』 * 泥だらけの姿で屋敷に戻って来た二人に、しのぶ以外の全員が驚いた。 「伊之助と何をしてたんだ?」 冷や汗をかきながら炭治郎は、カナヲを心配する。 「炭治郎、大丈夫だよ。 あの……汚れてるから、あまり……近づかないで」 炭治郎が布でカナヲの汚れた顔を拭いてあげると、顔を真っ赤にしたカナヲが涙目になっている。 その姿に、しのぶとすみ達は微笑んだ。 伊之助が部屋の方へと廊下を歩き出した。 アオイは、その後を追いかける。 目を瞑りながら、震える声で名前を呼んだ。 「い、伊之助さん」 アオイの呼びかけに、伊之助は立ち止まって振り返った。 「これ、ありがとうございます。 炭治郎さんに聞きました。 伊之助さんが、私に渡そうとしてくれていたこと……それなのに私……」 押し花のしおりを持つ手が震える。 伊之助を目の前にすると、上手く言葉が出ない。 けれど、今伝えないと後悔をすると思ったアオイは意を決して口を開く。 「伊之助さん!わ、私は、貴方の事が好きです」 「……おいアオイ、これ洗っとけよ」 伊之助は猪頭を外してアオイに渡した。 その行動にアオイは驚いて立ちすくむ。 (話してくれたと思ったら……無視された? どうして……勇気を出したのに……) アオイの瞳には涙が今にも溢れそうになっている。 自分の気持ちが伊之助には迷惑であると理解して、猪頭を受け取ってその場から去ろうとした。 「はい……わかりました。 では……」 「俺はお前が作った食いもんが好きだ。 特に天ぷらが一番だな」 「え?」 「アオイ」 「……はい?」 「もう他の男がいいとか言うなよ。 お前は、俺の最初で最後の女だからな。 いいな?」 「っな、なななんですか!?」 伊之助の言葉にアオイは混乱する。 先程まで自分の気持ちが伝わらなかった悲しみと、今度は反対に伊之助から気持ちを伝えられて、嬉しさと恥ずかしさで胸が苦しくなった。 「お前は俺の女だ。 わかったのかよ?」 「っう、……わかりました」 顔が真っ赤になっているアオイに、伊之助はニカッと笑い頭を軽くニ、三度叩いた。 「ちょっと、やめて下さい」 「ハハハハ、茹でタコみてぇだな!」 屈託のない伊之助の笑顔を見て、アオイも釣られて笑みがこぼれ、そのまま伊之助に抱きついた。 (本当にこの人は……でも、そういうとこが) 「伊之助さんだって、顔赤いじゃないですか」 「はァ!?赤くねぇぇし!」 「赤いです!真っ赤な林檎みたいです!」 「うるせぇぇえ。 お前が俺をキュンキュンさせるからだ!!」 「……アオイ良かったね」 「伊之助も、凄く嬉しそうだな」 二人の様子を、こっそりと覗いていたカナヲと炭治郎は、幸せそうな伊之助とアオイを見て心が温かくなって笑いあった。 「でも何であの二人、喧嘩してたんだ?」 「……炭治郎のせい」 「え!何で!?何で俺なんだ!?カナヲ?」 炭治郎がモテるから。 そんな誰にでも優しくて魅力的なあなたが好き。 私もアオイのように いつか自分の気持ちを伝えられたらいいな……。 「ねぇ、禰豆子ちゃん。 俺の出番少なくない!?」 「ウーウー(私も)」 [newpage] [chapter:花束を君に] 任務を終えたカナヲは、蝶屋敷の皆に土産菓子を買って帰ろうと町に寄った。 店に入ると二人の女性が楽しそうにしている。 自然と女性たちの会話がカナヲの耳にも入ってきた。 「そう言えば、炭治郎さんには会えたの?」 「それがまだ……。 以前、会いに行ったけれど生憎、留守だったのよ」 "炭治郎"の名前を聞いただけで、カナヲの肩がビクッと跳ね上がった。 どうして、炭治郎の名前を女性が口にしているのだろう。 ゆっくりと視線を女性に向けると、綺麗な着物を羽織った二十前後の人がいた。 (綺麗な人……) 女性たちの会話が気になってカナヲはその場で立ちすくむ。 「あなたが想いを寄せる程なんだから、素敵な殿方なんでしょうね」 「ええ、炭治郎さんは素敵な人よ。 あの人のお嫁になれたらどんなに幸せなんだろう」 「あら、あなた本気なのね。 早く想いを告げなさいよ」 (……炭治郎。 ……お嫁。 ……想い。 ……告げる。 ) 女性の言葉がカナヲの胸をチクチクと刺して、徐々に痛みまでが出てきた。 その場から逃げるようにカナヲは店を出た。 もしかして……前にアオイが話してた女性ってあの人なのかな…… 以前アオイが伊之助の事で悩んでいたとき、話の中で炭治郎に会いに来た女性のことを、ふとカナヲは思い出した。 あんなに綺麗で上品な人に好かれる炭治郎は凄いな……。 でも、何でこんなに……悲しい気持ちになるんだろう。 私、酷い人だ。 その晩、今日の出来事をカナヲはアオイに相談した。 「カナヲ?その女性だけじゃなくて、これからだって炭治郎さんに好意を持つ人が現れるかも知れないわよ。 カナヲには伊之助さんのことで助けてもらって本当に感謝してるの。 だから今度は私の番よ!カナヲを応援する、炭治郎さんに気持ちを告げよう?」 「……でも、炭治郎は私のことなんて。 ……迷惑じゃないかな」 「何言ってるのよ!カナヲは可愛いわよ。 それに炭治郎さんカナヲといる時、嬉しそうな顔してるわよ。 迷惑だなんて思わないわよ」 「……そうかな」 「その女性に炭治郎さん、とられてもいいの?」 「……嫌だ」 アオイはカナヲの背中を撫でて「頑張って」と応援をした。 「ちょっと炭治郎?さっきからカナヲちゃんが、お前を見ては何処かに行っての繰り返しをしてるぞ?用があるんじゃないの?」 善逸がカナヲの不思議な行動に気づき、炭治郎に耳打ちをした。 「そうだな。 でも俺から行くとカナヲ焦ってしまうだろ?だからカナヲが来てくれるのを待ってる」 この男、気づいてたのかよ。 善逸は歯痒い二人を見て嫌気がさしたが、自分がここで動いてあげないとカナヲが可哀想に思えた。 「炭治郎、俺ちょっと休憩するわ。 それじゃ!ねずこちゃぁあん!今行くからねぇえ!」 「おーい、善逸」 善逸は禰豆子が居る屋敷の部屋へと走って行った。 庭に一人残った炭治郎の元に、カナヲはゆっくりと歩み寄った。 「炭治郎」 「カナヲ、どうした?」 鍛えられた上半身裸の炭治郎の姿を見て、カナヲの頬がポッと赤く染まる。 俯いて黙ったままのカナヲに、休憩をしたいから縁側に座ろう?と炭治郎が誘い二人はお日さまの下、縁側に座った。 「カナヲ、水ありがとう」 アオイに応援されたけれど、炭治郎に何て想いを告げたらいいのかわからない……。 心臓がドクンドクン鳴っている…… 隣に座って黙ったままのカナヲに、炭治郎は首を傾げる。 (カナヲ……凄く緊張してるようだ。 どうしたんだろう?) 匂いでカナヲが緊張していることがわかった炭治郎は、和ます為に、カナヲの頭をそっと撫でた。 「え?……え!?」 「カナヲ大丈夫だ。 ゆっくりでいいから。 話したいことがあるんだろ?」 優しい瞳で頭を撫でてくれる炭治郎に、更にカナヲの顔が赤くなる。 なんで、撫でるの?本当に優しい人……炭治郎のバカ。 余計に恥ずかしくて言えないよ……。 カッと頬が赤く染まる。 「……カナヲ」 「……炭治郎、あの……」 上目遣いで見つめてくるカナヲが可愛くて、炭治郎の心臓がドクンっと跳ね上がった。 「……好き、です」 言葉を聞いた炭治郎は、カナヲが異性として自分に好意を持ってくれてるとは思っていないため、カナヲからの『好き』がどんな意味を持つのか解らず、頭を撫でられることが好きなのか?と考えていた。 「……え?……好きって?」 「…………」 一生懸命伝えた想いは炭治郎に届かず…… 恥ずかしさでカナヲは下を向いてしまった。 「あの、カナヲ?」 「…………」 「ごめんカナヲ。 その好きって、どう言う意味?」 「……炭治郎のバカ。 お嫁さんになりたいの『好き』だから!」 カナヲは立ち上がって、そのまま走り去ってしまった。 取り残された炭治郎は、顔を真っ赤にして硬直している。 その様子を陰ながら見守っていた善逸と禰豆子。 「とんでもねぇ炭治郎だ」 「フガ!フガ!(怒)」 * しばらくしても硬直したままの炭治郎。 その姿にアオイが後ろから呼びかける。 「炭治郎さん、炭治郎さん!!」 「はい!?」 「申し訳ないですが、炭治郎さんに来客です。 玄関でお待ち頂いております」 「あ、はい。 アオイさん、ありがとうございます」 縁側から立ち上がって、玄関へと向かおうとした時、アオイに呼び止められた。 「炭治郎さん、以前私に言って頂いた言葉を覚えておりますか?『自分の気持ちを正直に』と。 炭治郎さんが誰を想っているのかは、私にはわかりません。 ですが私はあなたの事も応援しています」 「アオイさん……ありがとう!アオイさん何だか、伊之助と恋仲になってから以前よりも、ぐうんと綺麗になりましたね。 では」 そうアオイに告げた炭治郎は、玄関先へ向かった。 (あの人……本当に罪深い男だわ。 カナヲ、探さないと……) [newpage] どうしよう……どうしよう……。 炭治郎にバカって言ってしまった。 ……うう、穴があれば入りたい。 「カナヲ?どうしたの?」 「……師範」 「あら?顔が真っ赤じゃないですか。 こちらに来なさい」 しのぶは自室にカナヲを呼び、何があったのか話を聞いた。 カナヲが話し終えると、しのぶは心から嬉しそうに微笑んだ。 「カナヲが炭治郎君にねぇ。 カナヲ大きくなったわね」 「……?」 「ふふふ、姉さんが知ったら大喜びをしそうですね。 大丈夫よ、カナヲ。 あなたは、私の継子であり私と姉さんの大切な妹なんだから」 「……師範」 「もしも炭治郎君がカナヲを傷つけるような事をしたら、私が許さないから安心しなさい」 「ありがとうございます。 ……しのぶ姉さん」 しのぶの優しい言葉に安心したカナヲはにっこりと微笑んだ。 廊下からカナヲを呼ぶアオイの声がする。 しのぶに「行ってきなさい」と言われたカナヲは、アオイの元に駆け寄った。 「カナヲ、心配したよ。 その……大丈夫?」 「ごめんアオイ。 うん……気持ち伝えたけど、炭治郎から逃げ出してしまった」 「頑張ったね、カナヲ」 アオイはニッコリと笑い、カナヲの頭を撫でた。 「……炭治郎は?」 「あ。 えっと……」 「?」 * 玄関で待っている来客の元に行くと、一度会った事がある女性が立っていた。 以前、町で落とし物をした困っている女性に炭治郎が声をかけ一緒に探した事があった。 鼻が利く炭治郎は無事に落とし物を見つけ女性は喜んでいた。 「炭治郎さん!やっと会えましたわ」 「あ!あの時の。 お久しぶりです。 この間はせっかく来て頂いたのに留守にして申し訳なかったです。 あと、美味しいお菓子ありがとうございました!屋敷の皆で頂きました!」 「いえいえ、あの今日は炭治郎さんにお伝えしたい事がありまして。 良ければ一緒に外を歩きませか?」 女性の誘いに炭治郎は戸惑った。 カナヲに想いを告げられて何も返事をしないまま、カナヲが行ってしまったのと、きっと傷つけてしまったのではないかと気になって仕方なかった。 「少しだけでいいので……駄目でしょうか?」 「わかりました。 ……行きましょう」 炭治郎は屋敷まで足を何度も運んでくれた女性を断る事が出来ず、女性と一緒に屋敷の外へ出掛けることに。 そんな炭治郎と女性の出掛ける姿を、カナヲとアオイは見てしまった。 (炭治郎さん、どうしてカナヲを置いてあの人と出掛けたのよ。 カナヲの気持ち知ってて……) アオイは炭治郎の行動に苛々した。 カナヲに目を向けると、悲しそうな表情で、ただただ二人の後ろ姿を眺めていた。 「カナヲ……」 「……仕方ないよ。 だってあの人……凄く綺麗だから」 アオイは下唇を噛み、震えているカナヲの手を繋いだ。 * 屋敷から少し離れたところで女性は立ち止まり、炭治郎に想いを告げた。 「助けて頂いた日からあなたの事が忘れられません。 私は炭治郎さんの事が好きです。 私と恋人になって下さい」 なんて日だろう。 二人の女性から想いを告げられるとは……出来れば人の心を傷つけたくない。 だけど、アオイに言われた『自分の気持ちを正直に』の言葉が炭治郎の胸に響く。 「お気持ちは大変嬉しいです。 ありがとうございます。 だけど、俺には心から想っている女の子がいます!申し訳ないですが、あなたの気持ちには応えられません」 * あれから、どのぐらいの時間が経ったのだろう。 炭治郎が屋敷から出て行ってから、カナヲは一人縁側に座ってゆっくりと流れる雲の動きを眺めていた。 ……たんじろう。 ……炭治郎。 今頃、何してるのかな。 あの人と楽しい時間を過ごしてるのかな…… 炭治郎が座っていた場所をそっと手で撫でる。 あれ……?どうして……私、泣いてるんだろう カナヲの瞳からポタポタと涙が零れた。 「……炭、治郎……逢いたいよ」 こんな気持ちになるなんて知らなかった。 初めての感情に戸惑い、どうしたらいいのかわからない。 カナヲは、溢れる涙を必死になって手で拭う。 「カナヲー!カナヲー!」 自分の名前を呼ぶ声がする。 声が聞こえてくる方に、顔を向けると、息を切らしながら炭治郎が走って来る。 カナヲの目の前で立ち止まった。 「……炭治郎?」 「カナヲ、待たせてごめんな?」 炭治郎はカナヲに近づいて、目から溢れている涙を指で拭って、眉を下げて優しく微笑んだ。 いつもの……炭治郎の優しい目。 ああ、私この人の事こんなにも好きなんだ…… 「俺は、カナヲが好きだ。 大好きだよ」 炭治郎の言葉に驚いて、カナヲの瞳が大きく見開いた。 「カナヲをお嫁さんにしたいの『好き』だよ」 「え、え?……本当に?」 「本当だよ。 カナヲ、受け取って欲しい」 綺麗な真っ白のカスミソウの花束を、炭治郎はカナヲに渡した。 想いを込めた花束を、受け取ったカナヲは嬉しさのあまり、涙をこぼす。 「ありがとう。 炭治郎……どうしよう」 「ん?カナヲどうしたんだ?」 「嬉しいの……凄く嬉しいの。 ……炭治郎、好き」 「俺も、好きだよ」 愛しい彼女を抱き寄せて、優しくぎゅっと抱きしめた。 二人の姿をこっそりと皆が温かく見守っていた。 なほ、すみ、きよの三人は顔を真っ赤にして歓喜する。 「キャー!キャー!」 「カナヲさん良かったですね!」 「見てるこっちまで、恥ずかしいですよ」 「とんでもねぇ、炭治郎だ。 あれじゃあ、プロポーズじゃねぇか!くぅー!!」 「まぁまぁ、いいじゃないですか。 ……本当に良かったわね、カナヲ」 「ウー!(喜)」 「カナヲ……ヒクッ、良かったね、本当に。 うぁあん!」 「おい、アオイ何泣いてんだァ?」 「伊之助さ、ん……帰ってきたのね。 お帰り……な、さい。 ヒクッ だってだって、嬉しくて……グズン」 「泣き虫な奴だな~!」 任務から戻った伊之助は、何が起きてるのか解らなかったけれど、涙をこぼしながら喜んでいる彼女を、優しく抱き寄せて頭を撫でた。 「あんれぇ~?今回も俺、出番少なくない? でも皆の幸せを見れて俺も嬉しいよ。 ねぇ禰豆子ちゃん!」 「ウン!ウン!(喜)」.

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【鬼滅の刃】伊之助、善逸、天元さん、死亡・・・・【ジャンプ感想】

伊之助 あおい

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『鬼滅の刃』登場人物(キャラクター)まとめ

伊之助 あおい

[chapter:幸せのクローバー] 「はぁー……」 先程から長嘆息を漏らす少女がいる。 思い悩んでいる姿に心配したカナヲは声をかけた。 「アオイ、どうしたの……?」 「カナヲ?」 「何かあった?……私で良ければ聞くよ」 以前に比べて、随分と心を開いて話をしてくれるようになったカナヲが、自分を心配して声をかけてくれた事に驚いたのと、カナヲの優しい気持ちが伝わって、アオイは嬉しくなった。 「ありがとうカナヲ。 実は、伊之助さんを怒らせてしまったみたいで……だけど、怒ってる理由がわからないの」 「伊之助?」 アオイの悩みの種は、何時も屋敷中を走り回って騒いでいる伊之助の事だった。 「その……いつもの口喧嘩では、なくて?」 アオイと伊之助は、よく口喧嘩をしている。 喧嘩と言っても伊之助の悪戯にアオイが注意をして、それに伊之助が反発して言い合いをしている程度。 蝶屋敷でのいつもの光景だ。 「違うの、完全に無視されてるの……。 こんなこと、初めてで……原因もわからないから、どうしていいか……」 微かに声を震わしながら、そう言ったアオイの瞳から涙がポタポタと零れている。 その姿に驚いたカナヲは、そっとアオイの頭に手をのせて、ゆっくりと頭を撫でた。 「伊之助と最後に、どんな会話をしたか教えて?一緒に考える」 「カナヲ……ありがとう……。 今朝の事なんだけど……」 * 今朝、屋敷前を箒で掃いていた時、見知らぬ女性から声をかけられた。 『すみません。 こちらに炭治郎さんがいらっしゃると伺ったのですが、お会いできますか?』 『炭治郎さんですか?今は出掛けている為、留守ですが……』 任務の為、炭治郎は早朝に出発をしていて、屋敷を留守にしている。 町から訪ねて来た女性なのか、綺麗な着物を羽織って、お化粧までしている。 女性の姿を見て、自分とは違うな、と思いながらアオイは、尋ねた。 『炭治郎さんに、ご用ですか?数日は帰ってこないと思います。 伝言があれば、私からお伝えいたします』 『ありがとうございます。 先日、炭治郎さんに助けて頂いてそのお礼をと思いまして。 よろしければ、こちらを炭治郎さんにお渡し頂けますでしょうか?』 女性は綺麗な包み紙の箱をアオイに渡して『また来ます』と言い残し屋敷を後にした。 (きっとあの女性は、炭治郎さんに好意を抱いてるのね。 本当に炭治郎さんは……) 女性の後ろ姿を、眺めながらアオイは心で思った。 * 「……ねぇ、アオイ。 その……女性と炭治郎は……」 女性とのやり取りの話をした後、隣で静かに話を聞いていたカナヲの顔が、真っ青になっているのに気づいたアオイは慌てだす。 「ち、違うからね、カナヲ!その女性が、一方的に炭治郎さんに会いに来ただけよ。 ほら、炭治郎さんどんな人にも優しいじゃない?」 「……うん。 炭治郎は優しい。 ……それと伊之助が関係あるの?」 「あ、そうよね。 ごめんね。 それで、その後に……」 本当に炭治郎は罪深い人だと思いながら、話の続きを始めた。 * 女性が屋敷を後にした直ぐに、大声で何かを叫びながら勢いよく猪頭がアオイに向かってドドドッと走って来た。 『猪突猛進!伊之助様のお通りじゃアアア!!』 アオイが手に持っている包み紙の箱が気になった伊之助は、地面を飛び跳ねながら、アオイに声をかけた。 『アオコ!何持ってんだ?食いもんか!?』 『伊之助さん、何でもかんでも食べ物と思わないで下さい。 それにこれは、炭治郎さんへの贈り物です』 『なんで健太郎なんだ?』 『先刻、女性がいらっしゃって炭治郎さんに助けて頂いたお礼と仰っておりました。 なのでこれは、炭治郎さんのです』 『助けられただけで、わざわざ礼言いに来るもんなのか?』 『それは……女性にとっては感謝する程嬉しかったのと、炭治郎さんに会いたいからお越しになられたんじゃないんですか。 ……炭治郎さんは、おモテになられるようですし』 『あいつモテるんか!!』 炭治郎の優しさに惚れる女性はいるだろう。 少なからず蝶屋敷にも一人、炭治郎に恋をしている乙女がいる。 『そうですね。 炭治郎さんは真っ直ぐで、強くて優しい方ですし、好く気持ちもわからなくはないです』 『……お前も炭治郎がいいのか?』 『え?まぁ……別に私は……』 『…………猪突猛進!!』 伊之助は、それ以上何も言わずそのまま走って屋敷を出て行ってしまった。 * 「……これが伊之助さんとの最後の会話。 その後、屋敷に戻って来られて、話かけても無視されるの」 話を聞き終えたカナヲは、俯きながらアオイに問う。 その声は、かすかに震えている。 「……アオイは……炭治郎のこと、好き、なの?」 「え!?なに言ってるのカナヲ!炭治郎さんの事は、人として尊敬しているけど、異性としては何も思ってないわよ!」 カナヲが何故、自分が炭治郎に好意を持っていると勘違いしたのかが解らない。 ああ……どうしよう。 カナヲを不安な気持ちにさせてしまった…… 「今の話を聞くと、アオイは炭治郎のこと想ってるのかな…って思ったの……」 「カナヲ?安心して!私が想ってるのは、伊之助さんだから!」 カナヲは瞳を見開いて驚いた。 初めてアオイの口から伊之助への気持ちを知って、顔を真っ赤にしているアオイが可愛いと思ってしまった。 「ねぇ、アオイ。 伊之助も私みたいに勘違い?したんじゃないのかな?」 「……勘違い?」 「アオイが炭治郎を好きって、勘違い」 「勘違いしたとしても、怒る理由にはならないでしょ」 「うーん……。 うまく言えないけど、もし炭治郎が他の女性のこと好きって知ったら……その場から逃げ出したくなるかも。 それにどんな顔して話したらいいか……わからなくなるかも。 だから伊之助も怒ってるんじゃなくて……」 「カナヲ……?」 「伊之助、悲しかったのかもしれない。 アオイから伊之助に理由を聞いた方がいい。 アオイ頑張って」 伊之助さんが、悲しい? カナヲがどう感じてそう思ったのかはわからないけど、私の為に一生懸命考えてくれた事が嬉しい。 カナヲの言う通り、悩んでるだけだと前に進まない。 行動しないといけない。 「カナヲありがとう。 伊之助さんに理由を聞いてみるね。 それともう少し自分の気持ちにも、素直になれるようになるね」 アオイの言葉を聞いて、カナヲの表情も明るくなって、ニコリと微笑んだ。 「話を聞いて下さい!伊之助さん」 「……(逃亡)」 何度話かけても、伊之助は直ぐに何処かに走っていなくなる。 そんな二人の姿を心配するカナヲと蝶屋敷の三人娘。 「伊之助……」 「アオイさんと伊之助さん、仲直りできるといいですね」 * 「お前、アオイちゃんと喧嘩してるの?」 「うるせぇぇえ、紋逸!!それよりも鍛えるぞ!」 「勘弁してよぉぉ。 俺、今任務から戻ったばっかりよ?それに炭治郎いないから禰豆子ちゃんに会えないじゃん!そんなのありー!?」 任務から戻った善逸は、禰豆子に会えないショックで嘆いていた。 二人の様子がいつもと違ったため尋ねてみたけれど、伊之助は、話を逸らして鍛えてくると言って一人で山に向かってしまった。 しばらくして、屋敷に伊之助の姿が見えないことに、アオイは気づく。 また伊之助さん、山へ行かれてしまったのかな。 このままずっと話せなかったらどうしよう…… 落ち込んでいるアオイの姿を見たカナヲは、伊之助のいる山へ向かおうと屋敷を出ようとしたとき、師範のしのぶが丁度、屋敷に戻って来た。 カナヲから事情を聞いたしのぶは「あれを持って行きなさい」と指示を出して、カナヲにある物を持たせた。 山に着くと、伊之助は二本の刀を振っていた。 「……伊之助、いた」 「お前も鍛えにきたのか!この親分様が鍛えてやるぞォォ!」 「話があるの。 お願いだから、アオイの話を聞いてあげて」 「…………」 伊之助は何も答えず、刀を振り続けた。 その姿をしばらく眺めていたカナヲは、持ってきた二本の竹刀を一本伊之助に渡した。 「なんだコレ?」 「……これで勝負しよ?私が勝ったらアオイと話をしてあげて」 「……よしわかったァ!!俺が勝ったら俺の言うこと聞けよ!」 「いいよ」 しのぶがカナヲに持たせたのは、竹刀だった。 伊之助のことだから話を聞かないとわかっていたため、勝負をかけるようにカナヲに伝えていたようだ。 二人の真剣勝負が始まった。 カナヲと伊之助が山で勝負をしてる時、蝶屋敷に木箱を背負った少年が戻ってきた。 「たんじろぉぉお!ねずこちゃぁあん!」 炭治郎と禰豆子の足音に気づいた善逸は、大喜びをして二人の元に駆け寄る。 「善逸、ただいま。 皆は?」 何時もは、アオイやなほ達が出迎えてくれるが、珍しく誰も居ないことに炭治郎は不思議に思う。 「それが俺も、今日任務から戻ったばかりで詳しい話は知らないんだけど、伊之助とアオイちゃんが喧嘩してるみたいなんだよ。 それでアオイちゃん今元気がなくて、さっきしのぶさんが戻ってきて女の子たちでパンケーキ作り始めてるんだよ。 多分アオイちゃんを励ます為だと思うんだけどね」 「そうか……喧嘩してるのか。 伊之助は?」 「あいつなら鍛えに山へ行ったよ」 アオイと伊之助の事を聞いた炭治郎は、悲しい気持ちになった。 心配してアオイの様子を見に調理場に向かった。 ふんわりと、甘く美味しそうな匂いがする。 顔を出した炭治郎にすみが気づく。 「あ、炭治郎さん!お帰りなさい」 ただいま、と笑顔で挨拶すると、すみ達は出迎える事が出来なかった事に謝罪をした。 気にしないで、と炭治郎が答えるとなほが「しのぶ様にパンケーキの作り方を教えて頂いて、沢山作ったので炭治郎さんも食べて下さい」と嬉しそうに話した。 アオイさん少し元気は無さそうだけど、パンケーキをしのぶさんに教えてもらって嬉しそうだな。 あれ?カナヲがいない 炭治郎はカナヲがいない事に気づいて、任務に出ているのか質問すると、笑みを浮かべてしのぶが答えた。 「カナヲは任務ではないですよ。 大事な用がある為、しばらく留守にしています。 日が暮れる前には、戻ってくると思いますよ」 大事な用とは、何だろうと思いながら、炭治郎はパンケーキをご馳走になった後、部屋に戻った。 部屋の机の上に"ある物"が置かれているのに気づく。 「伊之助……」 机の上に置かれている物を持って、炭治郎はアオイの所に向かった。 「アオイさん。 二人に何があったのか解りませんが、伊之助はきっと後悔してますよ。 ただ素直じゃない奴だから、アオイさんと話をしたくても話せないんだと思います」 「……炭治郎さんは優しいですね。 任務から戻ってきたばかりで疲れているでしょうに……心配をかけて申し訳ないです」 伊之助とアオイの二人のことを想いながら、眉を下げて優しい瞳で炭治郎は、手に持っていた物をアオイにそっと渡した。 「なんですか?これは?」 「本当は俺から渡す物ではないんですけど。 伊之助、渡してなかったみたいで……アオイさん、伊之助の想いを受け取ってあげて欲しい。 それで答えてあげて欲しいんだ」 アオイの手のひらには、四つ葉のクローバーの押し花のしおりがのっている。 炭治郎曰く、伊之助がアオイの為に四つ葉のクローバーを見つけるまで、ずっと探していたこと。 ようやく見つけたクローバーを、炭治郎に教えてもらいながら押し花のしおりを作っていたこと。 炭治郎が任務に出る前、伊之助から「俺、今日あいつに渡す」と伝えていたこと。 全てアオイを想っての伊之助の行動だった。 炭治郎の話を聞いたアオイは、ようやく伊之助がどうして話してくれなくなったのか理解した。 純粋な彼を傷つけてしまった。 「わ、わたし……伊之助さんを……うわぁぁん!」 アオイはその場で泣き崩れた。 焦った炭治郎は、アオイを慰めながら優しく声をかける。 「アオイさん、自分の気持ちを正直に!頑張って下さい!」 [newpage] 山にいる伊之助とカナヲは、決着がつかず拮抗した戦いになっていた。 紅い空が二人の影を伸ばす。 「イギイイ!お前なかなかやるなー!何でそんな強ぇんだ!」 「伊之助だって。 ……私は、しのぶ姉さん……師範の継子だから」 「どぉありゃアア!お前、俺の子分になれ!」 「遠慮、する」 「はあ゙ぁぁん!?伊之助様が親分なんだぞ! ツヤツヤのドングリの見つけかた教えてやんぞォ!」 「………………」 このままだと埒が明かない為、カナヲは伊之助に提案する。 「伊之助、このままだと日が暮れちゃう。 伊之助の言うこと聞くから、私のお願いも聞いて欲しい」 伊之助は動きを止めて、カナヲの提案に答えた。 「……わかった。 お前がアオイの為に体張ったんだ。 だから、アオイと話する」 「伊之助、ありがとう」 伊之助の言葉を聞いて安心したカナヲは、ふわりと笑った。 「それでハナヲ、俺の言うこと」 「子分になる以外なら、聞く」 「はあ゙ん!?舐めんじゃねぇよコラ!」 伊之助がカナヲに言った願いとは……。 『アオイと、これからも仲良くしろ』 * 泥だらけの姿で屋敷に戻って来た二人に、しのぶ以外の全員が驚いた。 「伊之助と何をしてたんだ?」 冷や汗をかきながら炭治郎は、カナヲを心配する。 「炭治郎、大丈夫だよ。 あの……汚れてるから、あまり……近づかないで」 炭治郎が布でカナヲの汚れた顔を拭いてあげると、顔を真っ赤にしたカナヲが涙目になっている。 その姿に、しのぶとすみ達は微笑んだ。 伊之助が部屋の方へと廊下を歩き出した。 アオイは、その後を追いかける。 目を瞑りながら、震える声で名前を呼んだ。 「い、伊之助さん」 アオイの呼びかけに、伊之助は立ち止まって振り返った。 「これ、ありがとうございます。 炭治郎さんに聞きました。 伊之助さんが、私に渡そうとしてくれていたこと……それなのに私……」 押し花のしおりを持つ手が震える。 伊之助を目の前にすると、上手く言葉が出ない。 けれど、今伝えないと後悔をすると思ったアオイは意を決して口を開く。 「伊之助さん!わ、私は、貴方の事が好きです」 「……おいアオイ、これ洗っとけよ」 伊之助は猪頭を外してアオイに渡した。 その行動にアオイは驚いて立ちすくむ。 (話してくれたと思ったら……無視された? どうして……勇気を出したのに……) アオイの瞳には涙が今にも溢れそうになっている。 自分の気持ちが伊之助には迷惑であると理解して、猪頭を受け取ってその場から去ろうとした。 「はい……わかりました。 では……」 「俺はお前が作った食いもんが好きだ。 特に天ぷらが一番だな」 「え?」 「アオイ」 「……はい?」 「もう他の男がいいとか言うなよ。 お前は、俺の最初で最後の女だからな。 いいな?」 「っな、なななんですか!?」 伊之助の言葉にアオイは混乱する。 先程まで自分の気持ちが伝わらなかった悲しみと、今度は反対に伊之助から気持ちを伝えられて、嬉しさと恥ずかしさで胸が苦しくなった。 「お前は俺の女だ。 わかったのかよ?」 「っう、……わかりました」 顔が真っ赤になっているアオイに、伊之助はニカッと笑い頭を軽くニ、三度叩いた。 「ちょっと、やめて下さい」 「ハハハハ、茹でタコみてぇだな!」 屈託のない伊之助の笑顔を見て、アオイも釣られて笑みがこぼれ、そのまま伊之助に抱きついた。 (本当にこの人は……でも、そういうとこが) 「伊之助さんだって、顔赤いじゃないですか」 「はァ!?赤くねぇぇし!」 「赤いです!真っ赤な林檎みたいです!」 「うるせぇぇえ。 お前が俺をキュンキュンさせるからだ!!」 「……アオイ良かったね」 「伊之助も、凄く嬉しそうだな」 二人の様子を、こっそりと覗いていたカナヲと炭治郎は、幸せそうな伊之助とアオイを見て心が温かくなって笑いあった。 「でも何であの二人、喧嘩してたんだ?」 「……炭治郎のせい」 「え!何で!?何で俺なんだ!?カナヲ?」 炭治郎がモテるから。 そんな誰にでも優しくて魅力的なあなたが好き。 私もアオイのように いつか自分の気持ちを伝えられたらいいな……。 「ねぇ、禰豆子ちゃん。 俺の出番少なくない!?」 「ウーウー(私も)」 [newpage] [chapter:花束を君に] 任務を終えたカナヲは、蝶屋敷の皆に土産菓子を買って帰ろうと町に寄った。 店に入ると二人の女性が楽しそうにしている。 自然と女性たちの会話がカナヲの耳にも入ってきた。 「そう言えば、炭治郎さんには会えたの?」 「それがまだ……。 以前、会いに行ったけれど生憎、留守だったのよ」 "炭治郎"の名前を聞いただけで、カナヲの肩がビクッと跳ね上がった。 どうして、炭治郎の名前を女性が口にしているのだろう。 ゆっくりと視線を女性に向けると、綺麗な着物を羽織った二十前後の人がいた。 (綺麗な人……) 女性たちの会話が気になってカナヲはその場で立ちすくむ。 「あなたが想いを寄せる程なんだから、素敵な殿方なんでしょうね」 「ええ、炭治郎さんは素敵な人よ。 あの人のお嫁になれたらどんなに幸せなんだろう」 「あら、あなた本気なのね。 早く想いを告げなさいよ」 (……炭治郎。 ……お嫁。 ……想い。 ……告げる。 ) 女性の言葉がカナヲの胸をチクチクと刺して、徐々に痛みまでが出てきた。 その場から逃げるようにカナヲは店を出た。 もしかして……前にアオイが話してた女性ってあの人なのかな…… 以前アオイが伊之助の事で悩んでいたとき、話の中で炭治郎に会いに来た女性のことを、ふとカナヲは思い出した。 あんなに綺麗で上品な人に好かれる炭治郎は凄いな……。 でも、何でこんなに……悲しい気持ちになるんだろう。 私、酷い人だ。 その晩、今日の出来事をカナヲはアオイに相談した。 「カナヲ?その女性だけじゃなくて、これからだって炭治郎さんに好意を持つ人が現れるかも知れないわよ。 カナヲには伊之助さんのことで助けてもらって本当に感謝してるの。 だから今度は私の番よ!カナヲを応援する、炭治郎さんに気持ちを告げよう?」 「……でも、炭治郎は私のことなんて。 ……迷惑じゃないかな」 「何言ってるのよ!カナヲは可愛いわよ。 それに炭治郎さんカナヲといる時、嬉しそうな顔してるわよ。 迷惑だなんて思わないわよ」 「……そうかな」 「その女性に炭治郎さん、とられてもいいの?」 「……嫌だ」 アオイはカナヲの背中を撫でて「頑張って」と応援をした。 「ちょっと炭治郎?さっきからカナヲちゃんが、お前を見ては何処かに行っての繰り返しをしてるぞ?用があるんじゃないの?」 善逸がカナヲの不思議な行動に気づき、炭治郎に耳打ちをした。 「そうだな。 でも俺から行くとカナヲ焦ってしまうだろ?だからカナヲが来てくれるのを待ってる」 この男、気づいてたのかよ。 善逸は歯痒い二人を見て嫌気がさしたが、自分がここで動いてあげないとカナヲが可哀想に思えた。 「炭治郎、俺ちょっと休憩するわ。 それじゃ!ねずこちゃぁあん!今行くからねぇえ!」 「おーい、善逸」 善逸は禰豆子が居る屋敷の部屋へと走って行った。 庭に一人残った炭治郎の元に、カナヲはゆっくりと歩み寄った。 「炭治郎」 「カナヲ、どうした?」 鍛えられた上半身裸の炭治郎の姿を見て、カナヲの頬がポッと赤く染まる。 俯いて黙ったままのカナヲに、休憩をしたいから縁側に座ろう?と炭治郎が誘い二人はお日さまの下、縁側に座った。 「カナヲ、水ありがとう」 アオイに応援されたけれど、炭治郎に何て想いを告げたらいいのかわからない……。 心臓がドクンドクン鳴っている…… 隣に座って黙ったままのカナヲに、炭治郎は首を傾げる。 (カナヲ……凄く緊張してるようだ。 どうしたんだろう?) 匂いでカナヲが緊張していることがわかった炭治郎は、和ます為に、カナヲの頭をそっと撫でた。 「え?……え!?」 「カナヲ大丈夫だ。 ゆっくりでいいから。 話したいことがあるんだろ?」 優しい瞳で頭を撫でてくれる炭治郎に、更にカナヲの顔が赤くなる。 なんで、撫でるの?本当に優しい人……炭治郎のバカ。 余計に恥ずかしくて言えないよ……。 カッと頬が赤く染まる。 「……カナヲ」 「……炭治郎、あの……」 上目遣いで見つめてくるカナヲが可愛くて、炭治郎の心臓がドクンっと跳ね上がった。 「……好き、です」 言葉を聞いた炭治郎は、カナヲが異性として自分に好意を持ってくれてるとは思っていないため、カナヲからの『好き』がどんな意味を持つのか解らず、頭を撫でられることが好きなのか?と考えていた。 「……え?……好きって?」 「…………」 一生懸命伝えた想いは炭治郎に届かず…… 恥ずかしさでカナヲは下を向いてしまった。 「あの、カナヲ?」 「…………」 「ごめんカナヲ。 その好きって、どう言う意味?」 「……炭治郎のバカ。 お嫁さんになりたいの『好き』だから!」 カナヲは立ち上がって、そのまま走り去ってしまった。 取り残された炭治郎は、顔を真っ赤にして硬直している。 その様子を陰ながら見守っていた善逸と禰豆子。 「とんでもねぇ炭治郎だ」 「フガ!フガ!(怒)」 * しばらくしても硬直したままの炭治郎。 その姿にアオイが後ろから呼びかける。 「炭治郎さん、炭治郎さん!!」 「はい!?」 「申し訳ないですが、炭治郎さんに来客です。 玄関でお待ち頂いております」 「あ、はい。 アオイさん、ありがとうございます」 縁側から立ち上がって、玄関へと向かおうとした時、アオイに呼び止められた。 「炭治郎さん、以前私に言って頂いた言葉を覚えておりますか?『自分の気持ちを正直に』と。 炭治郎さんが誰を想っているのかは、私にはわかりません。 ですが私はあなたの事も応援しています」 「アオイさん……ありがとう!アオイさん何だか、伊之助と恋仲になってから以前よりも、ぐうんと綺麗になりましたね。 では」 そうアオイに告げた炭治郎は、玄関先へ向かった。 (あの人……本当に罪深い男だわ。 カナヲ、探さないと……) [newpage] どうしよう……どうしよう……。 炭治郎にバカって言ってしまった。 ……うう、穴があれば入りたい。 「カナヲ?どうしたの?」 「……師範」 「あら?顔が真っ赤じゃないですか。 こちらに来なさい」 しのぶは自室にカナヲを呼び、何があったのか話を聞いた。 カナヲが話し終えると、しのぶは心から嬉しそうに微笑んだ。 「カナヲが炭治郎君にねぇ。 カナヲ大きくなったわね」 「……?」 「ふふふ、姉さんが知ったら大喜びをしそうですね。 大丈夫よ、カナヲ。 あなたは、私の継子であり私と姉さんの大切な妹なんだから」 「……師範」 「もしも炭治郎君がカナヲを傷つけるような事をしたら、私が許さないから安心しなさい」 「ありがとうございます。 ……しのぶ姉さん」 しのぶの優しい言葉に安心したカナヲはにっこりと微笑んだ。 廊下からカナヲを呼ぶアオイの声がする。 しのぶに「行ってきなさい」と言われたカナヲは、アオイの元に駆け寄った。 「カナヲ、心配したよ。 その……大丈夫?」 「ごめんアオイ。 うん……気持ち伝えたけど、炭治郎から逃げ出してしまった」 「頑張ったね、カナヲ」 アオイはニッコリと笑い、カナヲの頭を撫でた。 「……炭治郎は?」 「あ。 えっと……」 「?」 * 玄関で待っている来客の元に行くと、一度会った事がある女性が立っていた。 以前、町で落とし物をした困っている女性に炭治郎が声をかけ一緒に探した事があった。 鼻が利く炭治郎は無事に落とし物を見つけ女性は喜んでいた。 「炭治郎さん!やっと会えましたわ」 「あ!あの時の。 お久しぶりです。 この間はせっかく来て頂いたのに留守にして申し訳なかったです。 あと、美味しいお菓子ありがとうございました!屋敷の皆で頂きました!」 「いえいえ、あの今日は炭治郎さんにお伝えしたい事がありまして。 良ければ一緒に外を歩きませか?」 女性の誘いに炭治郎は戸惑った。 カナヲに想いを告げられて何も返事をしないまま、カナヲが行ってしまったのと、きっと傷つけてしまったのではないかと気になって仕方なかった。 「少しだけでいいので……駄目でしょうか?」 「わかりました。 ……行きましょう」 炭治郎は屋敷まで足を何度も運んでくれた女性を断る事が出来ず、女性と一緒に屋敷の外へ出掛けることに。 そんな炭治郎と女性の出掛ける姿を、カナヲとアオイは見てしまった。 (炭治郎さん、どうしてカナヲを置いてあの人と出掛けたのよ。 カナヲの気持ち知ってて……) アオイは炭治郎の行動に苛々した。 カナヲに目を向けると、悲しそうな表情で、ただただ二人の後ろ姿を眺めていた。 「カナヲ……」 「……仕方ないよ。 だってあの人……凄く綺麗だから」 アオイは下唇を噛み、震えているカナヲの手を繋いだ。 * 屋敷から少し離れたところで女性は立ち止まり、炭治郎に想いを告げた。 「助けて頂いた日からあなたの事が忘れられません。 私は炭治郎さんの事が好きです。 私と恋人になって下さい」 なんて日だろう。 二人の女性から想いを告げられるとは……出来れば人の心を傷つけたくない。 だけど、アオイに言われた『自分の気持ちを正直に』の言葉が炭治郎の胸に響く。 「お気持ちは大変嬉しいです。 ありがとうございます。 だけど、俺には心から想っている女の子がいます!申し訳ないですが、あなたの気持ちには応えられません」 * あれから、どのぐらいの時間が経ったのだろう。 炭治郎が屋敷から出て行ってから、カナヲは一人縁側に座ってゆっくりと流れる雲の動きを眺めていた。 ……たんじろう。 ……炭治郎。 今頃、何してるのかな。 あの人と楽しい時間を過ごしてるのかな…… 炭治郎が座っていた場所をそっと手で撫でる。 あれ……?どうして……私、泣いてるんだろう カナヲの瞳からポタポタと涙が零れた。 「……炭、治郎……逢いたいよ」 こんな気持ちになるなんて知らなかった。 初めての感情に戸惑い、どうしたらいいのかわからない。 カナヲは、溢れる涙を必死になって手で拭う。 「カナヲー!カナヲー!」 自分の名前を呼ぶ声がする。 声が聞こえてくる方に、顔を向けると、息を切らしながら炭治郎が走って来る。 カナヲの目の前で立ち止まった。 「……炭治郎?」 「カナヲ、待たせてごめんな?」 炭治郎はカナヲに近づいて、目から溢れている涙を指で拭って、眉を下げて優しく微笑んだ。 いつもの……炭治郎の優しい目。 ああ、私この人の事こんなにも好きなんだ…… 「俺は、カナヲが好きだ。 大好きだよ」 炭治郎の言葉に驚いて、カナヲの瞳が大きく見開いた。 「カナヲをお嫁さんにしたいの『好き』だよ」 「え、え?……本当に?」 「本当だよ。 カナヲ、受け取って欲しい」 綺麗な真っ白のカスミソウの花束を、炭治郎はカナヲに渡した。 想いを込めた花束を、受け取ったカナヲは嬉しさのあまり、涙をこぼす。 「ありがとう。 炭治郎……どうしよう」 「ん?カナヲどうしたんだ?」 「嬉しいの……凄く嬉しいの。 ……炭治郎、好き」 「俺も、好きだよ」 愛しい彼女を抱き寄せて、優しくぎゅっと抱きしめた。 二人の姿をこっそりと皆が温かく見守っていた。 なほ、すみ、きよの三人は顔を真っ赤にして歓喜する。 「キャー!キャー!」 「カナヲさん良かったですね!」 「見てるこっちまで、恥ずかしいですよ」 「とんでもねぇ、炭治郎だ。 あれじゃあ、プロポーズじゃねぇか!くぅー!!」 「まぁまぁ、いいじゃないですか。 ……本当に良かったわね、カナヲ」 「ウー!(喜)」 「カナヲ……ヒクッ、良かったね、本当に。 うぁあん!」 「おい、アオイ何泣いてんだァ?」 「伊之助さ、ん……帰ってきたのね。 お帰り……な、さい。 ヒクッ だってだって、嬉しくて……グズン」 「泣き虫な奴だな~!」 任務から戻った伊之助は、何が起きてるのか解らなかったけれど、涙をこぼしながら喜んでいる彼女を、優しく抱き寄せて頭を撫でた。 「あんれぇ~?今回も俺、出番少なくない? でも皆の幸せを見れて俺も嬉しいよ。 ねぇ禰豆子ちゃん!」 「ウン!ウン!(喜)」.

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