ガリバー 旅行 記 ラピュタ。 ガリヴァー旅行記(2)~空中浮遊都市ラピュタ~

ラピュタは本当にあったのか―空飛ぶ城塞伝説

ガリバー 旅行 記 ラピュタ

イギリスの医者ガリヴァーは船医となり、妻子を残して旅立ちますが、ある時、猛烈な嵐に遭って難破してしまいます。 ただ1人漂着した浜辺で目覚めると、身長15センチメートルほどの小人の国の軍隊に縛り上げられていたのでした。 捕えられ、監禁された彼でしたが、やがて少しずつこのリリパット国の言葉を覚え、皇帝とも親しくなります。 この国は、やはり小人の住む隣国・ブレフスキュ国と、2世代に渡る戦争をしています。 その理由は「卵の殻の正しい剥き方は、大きな方の端から割るか、それとも小さな方から割るか」というものです。 これは、当時(18世紀前半)のイギリスとフランスを諷刺したものといわれますが、著者のスウィフトがいかに戦争を馬鹿馬鹿しいものと考えていたかがわかります。 リリパット国で歓待されていたガリヴァーは、お礼にブレフスキュ国の艦隊を拿捕して戦争を終わらせます。 ところが、一部の政治家に嫌われていた彼は死刑にされそうになり、それを知ってブレフスキュ国に逃れました。 そして、浜辺に流れ着いたボートに乗ってイギリスに帰るのです。 これが、この作品の第1篇にして最もよく知られたエピソードです。 子供向けの本では、このエピソードだけのものもあります。 また、映画やテレビなどの映像化作品でも、このエピソードを中心としたものが多くなっています。 レミュエル・ガリヴァー この作品の主人公で医者。 船医となって旅をし、何度も困難な状況に陥りますが、旅の魅力に抗えないのか、懲りずに旅に出て行きます。 リリパット国皇帝 小人の国の王様です。 ガリヴァーに同情的でしたが、最後は彼の目を潰し、餓死させる刑を決定します。 グラムダルクリッチ 第2篇で訪れた巨人の国の少女です。 ガリヴァーをペットか赤ん坊のように愛し、世話をしてくれました。 ラピュータ人 空飛ぶ島に住む人々です。 身分の高い彼らは、絶えず物思いにふけっています。 ですので、必要な時は召し使いに専用の道具で叩いて貰わないと、現実に注意が向きません。 フウイヌム 馬の姿をした、人間並に知性の高い種族です。 争う事をせず、死を自然な事として受けいれ悲しまず、道徳的には人間より優れています。 奪い合ったり殺し合ったりする人間を軽蔑しています。 作者、ジョナサン・スウィフトを紹介!彼の生涯とは? 前述したとおり、この作品は元々児童文学ではなく、大人向けの諷刺小説でした。 それもかなり痛烈なもので、著者自身「読者を楽しませるためにではなく、怒らせるために書いた」と言っています。 当時のイギリス人やヨーロッパ人に対する批判がかなり具体的に盛り込まれているのですが、現代の日本人である私たちには、何が何に対応しているのか細かいところまではわかりません。 それでも、人間一般に対する強烈な嫌悪と怒り、そしてからかいの気持ちは伝わって来ます。 第1篇で訪れるリリパット国の大臣は、政治的な才覚ではなく、綱渡りの巧さで任命されます。 これは当時のイギリス政界を主導していたウォルポールの、理想を持たない現実主義を批判したものといわれているのです。 第3篇で訪れるラピュータの支配者たちは、すぐに物思いにふけりだして現実が見えなくなります。 これは科学者で数学者のニュートンをモチーフにしているといわれます。 背景としては、当時のアイルランドとイギリスの格差に憤っていたスウィフトにしてみれば、知性が高いのに数学や物理学に没入している人々を見るのは苛立たしかったのでしょう。 彼は当時の社会の腐敗ぶりを顕にするとともに、人間の権力欲、物欲、偽善、虚栄心、その他の悪さや愚かさ醜さを、これでもかと誇張して描きます。 そして、非常に残念なことですが、それらの皮肉は現代でも充分に通用するのです。 第3篇の終盤で、ガリヴァーは日本に立ち寄ります。 彼の渡航先で、ただ1つ登場する実在の国です。 スウィフトは、なぜわざわざ実在の国を登場させたのでしょうか。 当時、日本は鎖国中で、貿易が許されたヨーロッパの国はオランダだけでした。 もしかしたら、スウィフトはオランダに批判的だったのかも知れません。 オランダ商人はキリスト教徒にとって屈辱的な「踏み絵」を受け入れたのに対して、ガリヴァーは免除を乞うたことが強調されているので、そのように読む人もいます。 あるいは、鎖国して貿易を制限する生き方を選んで、戦争を避けた日本を賞讃したり羨んだりしていた、とする意見もあります。 一方で、当時オランダ人が書いた旅行記のパロディに過ぎないのではないか、とも考えられているのです。 私たち日本人にとっては気になる部分ですが、内容からははっきりと肯定も否定も読み取れず、曖昧な部分であります。 『ガリヴァー旅行記』の謎!火星の衛星を言い当てたって本当? 第3篇で、ガリヴァーはラピュータ島の天文学者の発見として、火星に2つの衛星があることを述べています。 現実に火星の2つの衛星が発見されたのは1877年ですから、スウィフトは151年も前にそれを予言していたことになりますが、本当でしょうか。 実は、この予言をしたのは彼ではなく、有名な天文学者のヨハネス・ケプラーでした。 この時代、すでに木星に4つの大きな衛星がある事が知られています。 そこでケプラーは、地球に1つ、木星に4つ衛星があるのだから、火星には2つ衛星があるのではないか、と予測を立てていました。 スウィフトはそれを知っていて、小説の参考にしたのでしょう。 概して彼は、浮き世離れした研究をしている科学者や数学者に批判的であったにもかかわらず、当時の科学についてよく勉強していました。 ラピュータ島の磁気浮上航行原理など、今日のSF作品でも通用しそうです。 『ガリヴァー旅行記』のテーマとは?内容から考察! 優れた文学の多くがそうであるように、この作品もさまざまな読み方が可能です。 そのなかでも作者の人間に対する批判的、というより意地悪な視点だけは疑いようがありません。 人間の身勝手な不公正さ、視野の狭さ、趣味の悪さ、独占欲などの負の側面を、極端に誇張して描いています。 そこだけに注目すると、作者のスウィフトはよほどの人間嫌いだったのだろうと思ってしまいます。 しかし彼は、この作品から想像されるような厭世的な世捨て人ではありませんでした。 生涯に渡って公職としては聖職者であったこと、前半生の活発な政治活動などを考えると、むしろ人と関ることに積極的であったとすら思えます。 そう考えると本作も単なる意地の悪い人間批判ではなく、自分の愚かさや悪さを自覚して、そちらに陥らないように注意してほしいという、願いや希望が込められているのかも知れません。 『ガリヴァー旅行記』の名言を紹介! ブロブディンナグ国(巨人国)の王が、ガリヴァーからヨーロッパの国々について話を聞いたときのこと。 「陛下がなによりもおどろかれたのは、平和なときに、 しかも自由な国民の中に、 金で雇われる軍隊がつねに存在しているという話を聞かれたときだった。 陛下は、もしおまえたちが、 自分たちがすすんで選んだ代表者たちによって、治められているとすれば、 いったい、だれを恐れ、だれと戦うつもりなのか、想像もつかない、といわれた」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) また、ヨーロッパの歴史についてのブロブディンナグ国王の意見。 「陛下は、歴史などといっても、 結局は、陰謀、反乱、殺人、虐殺、革命、追放の寄せ集めにすぎず、 すべて、人間の貪欲、党派心、偽善、裏切り、残酷、 怒り、狂気、憎悪、嫉妬、情欲、悪意、野心が生み出した最悪の結果ではないかといわれた」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) このように、要素や特徴を列挙することで強調する技法は、スウィフトの得意技で作品中でくり返し使われます。 さらに、理性ある馬・フウイヌムにガリヴァーが語る、人間の戦争について。 「しかも、このような対立、 ことに、どちらでも良いようなくだらない問題についての対立がもとで起こる戦争ほど、 凶暴で残酷きわまりなく、また、きりもなく続くものはありません」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) 「このような数多くの理由で、軍人という職業が、 あらゆる職業の中で最も名誉あるものとされています。 軍人というのは、自分にぜんぜん危害を加えたこともない同類の者を、 できるだけ多く、平気で殺すために雇われているヤフーのことだからです」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) ヤフーというのは人間のことです。 フウイヌムに、イギリスの法律と裁判について説明したガリヴァーの言葉。 「弁護士は、法廷で意見を述べるときには、 かんじんの訴訟問題が正しいか間違っているかという点には、わざとふれずに、 本題とは関係ない細ごましたことを、大声をあげ、 ものすごいけんまくで、うんざりするほどくどくどと、まくしたてます」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) ガリヴァーがフウイヌムに語る、国家の指導者。 「これからお話する、総理大臣、あるいは、首相というのは、 喜びや悲しみ、愛情や憎しみ、憐れみや怒りなどという感情は、 一かけらも持ち合わせていない人間のことで、少なくとも、 強い金銭欲、権力欲、名誉欲以外の、どんな情熱にも関係のない人間のことです」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) 名言のなかに込められているのも、やはり皮肉です。 しかし、やはり現代の私たちにも通じるものがあるといえるでしょう。 子供向けの絵本もおすすめ!小説が苦手な方にも 第2篇では、何もかもが巨大なブロブディンナグ国に上陸します。 小人の支配するリリパット国とは正反対です。 ガリヴァーは農夫に捕えられ見世物にされますが、やがて王妃に買い取られます。 王妃は、ペットか人形のようにではありますが、彼を可愛がりました。 彼は宮廷の女官たちにも人気がありましたが、敬意を払われたわけではなく、裸にされたりして性的なおもちゃにもされます。 巨大な女たちは、彼にとっては体の細部が拡大されて見え、体臭も強く感じられるので不潔な感じがするのでした。 ブロブディンナグ国王とは、イギリスやヨーロッパの社会や政治の話をします。 ガリヴァーは善意から、火薬の作り方を教えると提案しますが、彼からさんざん戦争の悲惨さを聞いていた国王は、そんな恐ろしいことは知りたくない、と拒否。 内部がガリヴァーの部屋となっている特製の箱に入って領地を巡業しているとき、箱ごと鳥に掠われ、海に落ちたガリヴァーは、遠洋でイギリス船に発見されて祖国に帰るのでした。 「ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記」の内容とは? またしても漂流したガリヴァーは、空飛ぶ島ラピュータに助けられます。 ラピュータは島国バルニバービの移動する首都で、国王の宮廷でした。 ラピュータは磁石の力によって空を飛ぶことを実現していたのです。 地上のバルニバービは、本来豊かな国でした。 しかし今はラピュータに支配され、彼ら流の現実に合わない机上の科学技術を押し付けられ、最大の都市であるラガードも荒れ果てています。 ガリヴァーはイギリスに帰ろうとしますが、船を待つ間に寄ってみたグラブダブドリッブ島で魔法使いの種族に出会います。 ガリヴァーは彼らに頼んで、歴史上の偉人を死者の世界から呼び出してもらい話を聞きますが、彼らは歴史に描かれたような立派な人物たちではなく、ガリヴァーはガッカリするのでした。 大きな島国ラグナグ王国に着いた彼は、不死人間ストラルドブラグの噂を聞きます。 彼は大いに羨み、自分が不死であったらこんな人生を送りたいと、さまざまな妄想を思い描くのです。 ところが、実際の不死人は、不死であっても不老ではないため、どこまでも老いさらばえていき、世間から厄介者扱いされて、悲惨な境涯を送っているのでした。 ラグナクを出航し日本に着いた彼は、日本の皇帝に謁見した後、長崎からオランダ船に乗ってイギリスに帰り着きました。 このラピュータという名前、空飛ぶ島という設定に聞き覚えのある人も多いでしょう。 作中で主人公のパズーが言っているように、宮崎駿が監督を勤めた『天空の城ラピュタ』のモデルになっているようです。 『ガリヴァー旅行記』の結末をネタバレ解説!馬の国の話「フウイヌム国渡航記」とは? この国にはヤフーと呼ばれる野蛮な生き物が居て、フウイヌムたちを悩ませていました。 そのヤフーは、爪が鋭くて毛深いことなどを除けば人間にそっくり。 ヤフーは利己的で欲深く、絶えず争っていました。 ガリヴァーは認めたくありませんでしたが、気高く誇り高いフウイヌムに比べると、姿だけではなく性質も、ヤフーの方が人間によく似ていたのです。 すっかり人間嫌いとなったガリヴァーは、このまま一生フウイヌムたちと暮らそうと決意。 ところが、フウイヌムは野蛮な生き物であるヤフーの駆除を決定し、ガリヴァーも駆除の対象に。 一体彼はどうなってしまうのでしょうか。 いかがでしたでしょうか。 子供向けの作品だと思っている方が多いのですが、実際は風刺が満載の、大人向けの小説となっています。 この記事を読んで気になった方は、ぜひ本を手に取ってみてください。

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ラピュタは本当にあったのか―空飛ぶ城塞伝説

ガリバー 旅行 記 ラピュタ

スウィフト Jonathan Swift 1667-1745 は、のダブリンで貧しい家庭に生まれ教会の牧師となり、ロンドンでトーリ党に属する政治家となったが敵が多くダブリンに戻り、内閣のアイルランド政策を厳しく批判するパンフレットを発行して危険人物視された。 にを発表、それは当時のイギリスの政治や社会のみならず、人間全般に対する鋭い風刺に満ちており、「最も不愉快な書物(中野好夫)」と言われながらも大きな反響を呼び起こした。 晩年は不遇であったが、その著作は単なる子供向けの童話ではなく、政治と社会のあり方に警告を発する書物として多くの読者を得ている。 以下、新潮文庫版『ガリヴァー旅行記』の中野好夫氏の解説から、スウィフトの紹介文の一部を引用する。 苛酷なスウィフトの生涯 引用 作者ジョナサン・スウィフトは、1667年ダブリンに生まれた。 生まれながらにすでに父親の顔を知らなかった。 そしてこの早熟で、鋭敏な神経質の少年は、その青年時代までを経済上の不如意のため、ほとんど他人の家庭に厄介者として、日蔭の生活を送らなければならなかった。 大学生としては怠惰で、放縦で、手に負えない不良児だった。 形而上学に対する一生の嫌悪はこの時代にすでに根強く植えつけられた。 勉強したのは歴史と古典と、そして・・・詩とだけであったといわれている。 まったく生活のため僧職について、そして恋をした。 しかし彼の経済的無力を知っている聡明な少女は、彼の結婚強要を体よく回避した。 若い女と結婚するなと、彼は密かに誓ったとも言われる。 彼は傲岸不遜だった。 だが彼には自分にさえ、どうにも持て余し気味の烈しい世俗的野心が胸の内に煮え返っていた。 ・・・野心を抱いて幾度かロンドンへ出た。 そして若い美しい、彼の所謂ステラをも得たのだ。 ・・・野心と栄達とのためには彼はずいぶんと阿諛的屈辱をも敢えてした。 だが一度酬いられないと見るとたちまち豹変して、その毒舌嘲罵は相手の心臓をいえぐらないではおかなかったのである。 彼は昨日の民党(ホイッグ)支持を捨てて、反対党の王党トーリーに走った。 再び政治界の活躍時代が来た。 しかしそれも彼の期待は空しく裏切られなければならなかった。 1713年いっさいの野心から見放された五十に近い、そしてそのときすでに後年の精神病の萌芽さえ蝕みつつあった肉体を、ダブリンの聖パトリック教会副監督という、彼としてはあまりにも憤懣の閑地に持ち帰った。 アイルランド帰来後の彼の風刺は、もはや犬儒的な辛辣さを加え始めた。 1724年英国の対アイルランド貨幣政策の不正を痛撃した。 匿名の『ドレイピアの手紙』は彼の首に莫大な懸賞金を賭けさせた。 持病であった発作的眩暈は悪化の一途を辿るばかりであった。 しかもこのころ彼に激しい熱情を投げかけた若い女性ヴァネッサは、ステラとの愛情のもつれから自ら生命を絶って、この悲劇はさらでだに傷ついた彼の心の創痍を深くした。 『ガリヴァ旅行記』は、実にこのあまりにも人間的な、悲痛な生活と感情との星雲の中にあって、すでに1715年ごろから書き始められ、それは沸き返る怒りと嫌悪と憤懣と憂悶との中で醗酵させられながら、1726年10月に、ついにその誕生を見たのである。 ・・・ 1728年、ステラの死後は、病勢はますます昂ずるばかりだった。 ますます狷介に人を避けた。 絶えず烈しい耳鳴がし、眩暈が絶えず襲って来た。 死と荒廃とは日一日とその影をこくした。 訪問者たちを送り出す時、彼は「さようなら、もうこれで二度とお目にかかれますまい」とさえ述べたと伝えられる。 1738年に完全な痴呆状態が現れた。 しかも酷薄な運命はこの痛ましい残酷な生命を、なお1745年、77歳まで生きのびさせた。 ・・・彼の遺書には、完備した精神病院の建設のためにその遺産が捧げられてあったという。 」 <『ガリヴァ旅行記』新潮文庫版 中野好夫解説 p. 417-423> ガリヴァー旅行記 1726年、スウィフトが発表した小説。 当時のイギリス政界を風刺した。 『ガリヴァー旅行記』はにが発表した小説。 船医ガリヴァーが体験した4回の航海談という形をとっており、特に第1回の小人国(リリパッド王国)と第2回の巨人国(ブロブディンナグ王国)の二話は奇想天外な冒険談、子供向けの物語としてもよく知られている。 しかし、この2回にも当時のイギリスの政治や社会、文化に対する風刺がこめられており、ジョージ1世治下の内閣の政治や、トーリとホイッグの政争、英仏のたえざる戦争などが皮肉られている。 そして特に第3回の飛島(ラピュタ)と第4回の馬国(フウイヌム国)への渡航記は、人間社会さらには人間そのものへのするどい皮肉を含んでおり、現代の政治や世界を考える上でも多くの警告と示唆を与えてくれる書物である。 スウィフトの政治批判 『ガリヴァー旅行記』第4編、フウイヌム国渡航記は最も風刺が鋭い内容となっている。 この国は馬が支配者であり、人間の姿に近い動物ヤフーが家畜として飼われている。 馬たちは理性があり戦いを知らず平和に暮らしているが、ヤフーは食べ物やつまらないことで常にいがみ合っている。 ガリヴァーはヤフーの姿の中に現実の人間を見る。 あるとき主人の馬から人間界の国家のしくみでの宰相のやくわりについてたずれられたガリヴァーは、こんな風に応えている。 引用 ・・・宰相とは、悲喜、愛憎、憐愍、怒りと、そういった感情をまったく失った人間、いや少なくとも激しい富貴、権勢、位階欲以外は、いかなる感情にも用のない人間である。 ずいぶんしゃべることはしゃべるが、どんなことがあっても、決して自分の本心を表すことはない。 彼が真実を語るときは、それはかならず相手に虚言だと思わせるためであり、逆にまた虚言を吐く場合は、かならず真実と思わせるのが目的である。 また彼が蔭で最もひどい悪口をする人物は、決って取り立てにあう人間であり、もしまた彼が諸君のことを他人に向かってなり、諸君の面前で称賛するようなことがあれば、諸君はまずもうその日から捨てられるものと思って間違いない。 <『ガリヴァ旅行記』新潮文庫版 中野好夫訳 p. 336> このほか、政治家だけでなく、弁護士や医者、学者といった人びとが次々とやり玉に挙げあれ、酷評されている。 Episode ヤフーとラピュタ 第4編のフウイヌム国にヤフーと言われる動物が出てくる。 彼らは醜く、悪臭を放ち、いつもいがみ合い、食欲と性欲の本能を隠さない。 そしてこの国の主人公である馬たちの家畜として飼われている。 ふとしたことからこの国に渡ったガリヴァーも姿が似ていたのでヤフーの一種とされる。 ガリヴァーが観察したところでは、大昔この国に来た人間(しかもイギリス人)が姿を変えたものであるらしい。 なお、ヤフーは現代の英語でも「粗野な人」という意味で使われるが、今をときめくポータルサイト YAHOO は、その創始者のジェリー=ヤンとデビット=ファイロによると、自分たちは「ならずもの」という意味を掛けて命名したと言っている。 また、宮崎駿のアニメ『天空の城ラピュタ』は、話の内容は違うが、その発想は『ガリヴァー旅行記』の飛島ラピュタからとったという。 Episode ガリヴァーの日本渡航 この物語は1699年から1715年にかけての4回の航海での体験談となっているが、その第3回の帰路、ガリヴァーが日本に渡航する話が出てくる(第3編第11章)。 ザモスキ(観音崎?)というところに上陸してエドに向かい、皇帝(つまり将軍)にラグナグ国王の親書を提出する。 彼は日本がオランダとだけ貿易をしていることを知っていたので、オランダ人と偽って入国した。 そして「あの十字架踏みの儀式」(つまり踏絵)だけは免除していただきたいと願い出る。 皇帝は、そんなことを願うのは初めてだ、といっていぶかるが、ラグナグ国の特使であることからその願いを許し、護衛をつけてナンガサク(長崎)まで送り届けてくれた。 1709年、そこからアンボイナ号というオランダ船にのってアムステルダムに向かう。 『ガリヴァー旅行記』の中では珍しく実在する国として日本が登場し、記述は短いが、鎖国下の日本に対するイギリス人の知識のほどを知ることができる。

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スウィフト/ガリヴァー旅行記

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イギリスの医者ガリヴァーは船医となり、妻子を残して旅立ちますが、ある時、猛烈な嵐に遭って難破してしまいます。 ただ1人漂着した浜辺で目覚めると、身長15センチメートルほどの小人の国の軍隊に縛り上げられていたのでした。 捕えられ、監禁された彼でしたが、やがて少しずつこのリリパット国の言葉を覚え、皇帝とも親しくなります。 この国は、やはり小人の住む隣国・ブレフスキュ国と、2世代に渡る戦争をしています。 その理由は「卵の殻の正しい剥き方は、大きな方の端から割るか、それとも小さな方から割るか」というものです。 これは、当時(18世紀前半)のイギリスとフランスを諷刺したものといわれますが、著者のスウィフトがいかに戦争を馬鹿馬鹿しいものと考えていたかがわかります。 リリパット国で歓待されていたガリヴァーは、お礼にブレフスキュ国の艦隊を拿捕して戦争を終わらせます。 ところが、一部の政治家に嫌われていた彼は死刑にされそうになり、それを知ってブレフスキュ国に逃れました。 そして、浜辺に流れ着いたボートに乗ってイギリスに帰るのです。 これが、この作品の第1篇にして最もよく知られたエピソードです。 子供向けの本では、このエピソードだけのものもあります。 また、映画やテレビなどの映像化作品でも、このエピソードを中心としたものが多くなっています。 レミュエル・ガリヴァー この作品の主人公で医者。 船医となって旅をし、何度も困難な状況に陥りますが、旅の魅力に抗えないのか、懲りずに旅に出て行きます。 リリパット国皇帝 小人の国の王様です。 ガリヴァーに同情的でしたが、最後は彼の目を潰し、餓死させる刑を決定します。 グラムダルクリッチ 第2篇で訪れた巨人の国の少女です。 ガリヴァーをペットか赤ん坊のように愛し、世話をしてくれました。 ラピュータ人 空飛ぶ島に住む人々です。 身分の高い彼らは、絶えず物思いにふけっています。 ですので、必要な時は召し使いに専用の道具で叩いて貰わないと、現実に注意が向きません。 フウイヌム 馬の姿をした、人間並に知性の高い種族です。 争う事をせず、死を自然な事として受けいれ悲しまず、道徳的には人間より優れています。 奪い合ったり殺し合ったりする人間を軽蔑しています。 作者、ジョナサン・スウィフトを紹介!彼の生涯とは? 前述したとおり、この作品は元々児童文学ではなく、大人向けの諷刺小説でした。 それもかなり痛烈なもので、著者自身「読者を楽しませるためにではなく、怒らせるために書いた」と言っています。 当時のイギリス人やヨーロッパ人に対する批判がかなり具体的に盛り込まれているのですが、現代の日本人である私たちには、何が何に対応しているのか細かいところまではわかりません。 それでも、人間一般に対する強烈な嫌悪と怒り、そしてからかいの気持ちは伝わって来ます。 第1篇で訪れるリリパット国の大臣は、政治的な才覚ではなく、綱渡りの巧さで任命されます。 これは当時のイギリス政界を主導していたウォルポールの、理想を持たない現実主義を批判したものといわれているのです。 第3篇で訪れるラピュータの支配者たちは、すぐに物思いにふけりだして現実が見えなくなります。 これは科学者で数学者のニュートンをモチーフにしているといわれます。 背景としては、当時のアイルランドとイギリスの格差に憤っていたスウィフトにしてみれば、知性が高いのに数学や物理学に没入している人々を見るのは苛立たしかったのでしょう。 彼は当時の社会の腐敗ぶりを顕にするとともに、人間の権力欲、物欲、偽善、虚栄心、その他の悪さや愚かさ醜さを、これでもかと誇張して描きます。 そして、非常に残念なことですが、それらの皮肉は現代でも充分に通用するのです。 第3篇の終盤で、ガリヴァーは日本に立ち寄ります。 彼の渡航先で、ただ1つ登場する実在の国です。 スウィフトは、なぜわざわざ実在の国を登場させたのでしょうか。 当時、日本は鎖国中で、貿易が許されたヨーロッパの国はオランダだけでした。 もしかしたら、スウィフトはオランダに批判的だったのかも知れません。 オランダ商人はキリスト教徒にとって屈辱的な「踏み絵」を受け入れたのに対して、ガリヴァーは免除を乞うたことが強調されているので、そのように読む人もいます。 あるいは、鎖国して貿易を制限する生き方を選んで、戦争を避けた日本を賞讃したり羨んだりしていた、とする意見もあります。 一方で、当時オランダ人が書いた旅行記のパロディに過ぎないのではないか、とも考えられているのです。 私たち日本人にとっては気になる部分ですが、内容からははっきりと肯定も否定も読み取れず、曖昧な部分であります。 『ガリヴァー旅行記』の謎!火星の衛星を言い当てたって本当? 第3篇で、ガリヴァーはラピュータ島の天文学者の発見として、火星に2つの衛星があることを述べています。 現実に火星の2つの衛星が発見されたのは1877年ですから、スウィフトは151年も前にそれを予言していたことになりますが、本当でしょうか。 実は、この予言をしたのは彼ではなく、有名な天文学者のヨハネス・ケプラーでした。 この時代、すでに木星に4つの大きな衛星がある事が知られています。 そこでケプラーは、地球に1つ、木星に4つ衛星があるのだから、火星には2つ衛星があるのではないか、と予測を立てていました。 スウィフトはそれを知っていて、小説の参考にしたのでしょう。 概して彼は、浮き世離れした研究をしている科学者や数学者に批判的であったにもかかわらず、当時の科学についてよく勉強していました。 ラピュータ島の磁気浮上航行原理など、今日のSF作品でも通用しそうです。 『ガリヴァー旅行記』のテーマとは?内容から考察! 優れた文学の多くがそうであるように、この作品もさまざまな読み方が可能です。 そのなかでも作者の人間に対する批判的、というより意地悪な視点だけは疑いようがありません。 人間の身勝手な不公正さ、視野の狭さ、趣味の悪さ、独占欲などの負の側面を、極端に誇張して描いています。 そこだけに注目すると、作者のスウィフトはよほどの人間嫌いだったのだろうと思ってしまいます。 しかし彼は、この作品から想像されるような厭世的な世捨て人ではありませんでした。 生涯に渡って公職としては聖職者であったこと、前半生の活発な政治活動などを考えると、むしろ人と関ることに積極的であったとすら思えます。 そう考えると本作も単なる意地の悪い人間批判ではなく、自分の愚かさや悪さを自覚して、そちらに陥らないように注意してほしいという、願いや希望が込められているのかも知れません。 『ガリヴァー旅行記』の名言を紹介! ブロブディンナグ国(巨人国)の王が、ガリヴァーからヨーロッパの国々について話を聞いたときのこと。 「陛下がなによりもおどろかれたのは、平和なときに、 しかも自由な国民の中に、 金で雇われる軍隊がつねに存在しているという話を聞かれたときだった。 陛下は、もしおまえたちが、 自分たちがすすんで選んだ代表者たちによって、治められているとすれば、 いったい、だれを恐れ、だれと戦うつもりなのか、想像もつかない、といわれた」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) また、ヨーロッパの歴史についてのブロブディンナグ国王の意見。 「陛下は、歴史などといっても、 結局は、陰謀、反乱、殺人、虐殺、革命、追放の寄せ集めにすぎず、 すべて、人間の貪欲、党派心、偽善、裏切り、残酷、 怒り、狂気、憎悪、嫉妬、情欲、悪意、野心が生み出した最悪の結果ではないかといわれた」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) このように、要素や特徴を列挙することで強調する技法は、スウィフトの得意技で作品中でくり返し使われます。 さらに、理性ある馬・フウイヌムにガリヴァーが語る、人間の戦争について。 「しかも、このような対立、 ことに、どちらでも良いようなくだらない問題についての対立がもとで起こる戦争ほど、 凶暴で残酷きわまりなく、また、きりもなく続くものはありません」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) 「このような数多くの理由で、軍人という職業が、 あらゆる職業の中で最も名誉あるものとされています。 軍人というのは、自分にぜんぜん危害を加えたこともない同類の者を、 できるだけ多く、平気で殺すために雇われているヤフーのことだからです」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) ヤフーというのは人間のことです。 フウイヌムに、イギリスの法律と裁判について説明したガリヴァーの言葉。 「弁護士は、法廷で意見を述べるときには、 かんじんの訴訟問題が正しいか間違っているかという点には、わざとふれずに、 本題とは関係ない細ごましたことを、大声をあげ、 ものすごいけんまくで、うんざりするほどくどくどと、まくしたてます」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) ガリヴァーがフウイヌムに語る、国家の指導者。 「これからお話する、総理大臣、あるいは、首相というのは、 喜びや悲しみ、愛情や憎しみ、憐れみや怒りなどという感情は、 一かけらも持ち合わせていない人間のことで、少なくとも、 強い金銭欲、権力欲、名誉欲以外の、どんな情熱にも関係のない人間のことです」 (『ガリヴァー旅行記』より引用) 名言のなかに込められているのも、やはり皮肉です。 しかし、やはり現代の私たちにも通じるものがあるといえるでしょう。 子供向けの絵本もおすすめ!小説が苦手な方にも 第2篇では、何もかもが巨大なブロブディンナグ国に上陸します。 小人の支配するリリパット国とは正反対です。 ガリヴァーは農夫に捕えられ見世物にされますが、やがて王妃に買い取られます。 王妃は、ペットか人形のようにではありますが、彼を可愛がりました。 彼は宮廷の女官たちにも人気がありましたが、敬意を払われたわけではなく、裸にされたりして性的なおもちゃにもされます。 巨大な女たちは、彼にとっては体の細部が拡大されて見え、体臭も強く感じられるので不潔な感じがするのでした。 ブロブディンナグ国王とは、イギリスやヨーロッパの社会や政治の話をします。 ガリヴァーは善意から、火薬の作り方を教えると提案しますが、彼からさんざん戦争の悲惨さを聞いていた国王は、そんな恐ろしいことは知りたくない、と拒否。 内部がガリヴァーの部屋となっている特製の箱に入って領地を巡業しているとき、箱ごと鳥に掠われ、海に落ちたガリヴァーは、遠洋でイギリス船に発見されて祖国に帰るのでした。 「ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記」の内容とは? またしても漂流したガリヴァーは、空飛ぶ島ラピュータに助けられます。 ラピュータは島国バルニバービの移動する首都で、国王の宮廷でした。 ラピュータは磁石の力によって空を飛ぶことを実現していたのです。 地上のバルニバービは、本来豊かな国でした。 しかし今はラピュータに支配され、彼ら流の現実に合わない机上の科学技術を押し付けられ、最大の都市であるラガードも荒れ果てています。 ガリヴァーはイギリスに帰ろうとしますが、船を待つ間に寄ってみたグラブダブドリッブ島で魔法使いの種族に出会います。 ガリヴァーは彼らに頼んで、歴史上の偉人を死者の世界から呼び出してもらい話を聞きますが、彼らは歴史に描かれたような立派な人物たちではなく、ガリヴァーはガッカリするのでした。 大きな島国ラグナグ王国に着いた彼は、不死人間ストラルドブラグの噂を聞きます。 彼は大いに羨み、自分が不死であったらこんな人生を送りたいと、さまざまな妄想を思い描くのです。 ところが、実際の不死人は、不死であっても不老ではないため、どこまでも老いさらばえていき、世間から厄介者扱いされて、悲惨な境涯を送っているのでした。 ラグナクを出航し日本に着いた彼は、日本の皇帝に謁見した後、長崎からオランダ船に乗ってイギリスに帰り着きました。 このラピュータという名前、空飛ぶ島という設定に聞き覚えのある人も多いでしょう。 作中で主人公のパズーが言っているように、宮崎駿が監督を勤めた『天空の城ラピュタ』のモデルになっているようです。 『ガリヴァー旅行記』の結末をネタバレ解説!馬の国の話「フウイヌム国渡航記」とは? この国にはヤフーと呼ばれる野蛮な生き物が居て、フウイヌムたちを悩ませていました。 そのヤフーは、爪が鋭くて毛深いことなどを除けば人間にそっくり。 ヤフーは利己的で欲深く、絶えず争っていました。 ガリヴァーは認めたくありませんでしたが、気高く誇り高いフウイヌムに比べると、姿だけではなく性質も、ヤフーの方が人間によく似ていたのです。 すっかり人間嫌いとなったガリヴァーは、このまま一生フウイヌムたちと暮らそうと決意。 ところが、フウイヌムは野蛮な生き物であるヤフーの駆除を決定し、ガリヴァーも駆除の対象に。 一体彼はどうなってしまうのでしょうか。 いかがでしたでしょうか。 子供向けの作品だと思っている方が多いのですが、実際は風刺が満載の、大人向けの小説となっています。 この記事を読んで気になった方は、ぜひ本を手に取ってみてください。

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