グラフェン ナノリボン。 田岡化学が連日のS高、グラフェンナノリボンで名大と共同研究へ

グラフェンナノリボンで不揮発性メモリ、東北大が開発

グラフェン ナノリボン

ナノメートルサイズの炭素物質(ナノカーボン)は、1990年代から次世代材料として脚光を浴び続けて来ました。 しかしながら、カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボンは単一の分子として分離・精製することが困難であり、「構造的に純粋な分子」として取り扱えていないという現実があるため、ナノカーボン科学は様々な構造をもつ分子の「混合物」としてのサイエンスに留まっています。 このような背景のもと、本研究領域では、未踏・新奇なナノカーボンを構造的に純粋な分子として設計・合成するとともに、それらを基盤として圧倒的に優れた機能性材料を創成し、それらの応用展開まで図ることにより、「分子ナノカーボン科学」という新分野の確立と、イノベーションの創出を目指します。 具体的には、次の3つのテーマに取り組みます。 第1のテーマとして、構造が明確に定まったカーボンナノチューブとグラフェンナノリボン、さらには新奇な3次元湾曲ナノカーボンの精密合成法を開発するとともに、その応用展開を図ります。 一例として、化学合成により構築したナノカーボン分子をテンプレートとして化学気相成長法などの手法を用い精密成長させ、巨大なナノカーボン分子を得ることを目指します。 また、第4のナノカーボンと位置づけられる3次元湾曲ナノカーボンを太陽電池、ユニバーサル有機エレクトロニクス材料、バイオイメージングに応用することも行います。 第2のテーマとして、走査型プローブ顕微鏡、単一ナノ構造近接場分光イメージング、単一光子計数技術ならびにX線結晶構造解析を駆使した単一ナノカーボンの構造・物性解析を行い、ナノカーボンの構造・物性やナノカーボン間の相互作用を明らかにします。 第3のテーマとして、ナノカーボン分子の集合体や単結晶のユニークな特徴を活かした新しい吸着・磁性・光学マテリアルの創出を目指します。 これらの研究を通じて、ナノカーボンを単一の分子として理解して活用するとともに、炭素材料の潜在能力を引き出す新たな標準を構築し、画期的な分子ナノカーボンマテリアルの創製により、産業界にも貢献することを目指します。

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田岡化学が連日のS高、グラフェンナノリボンで名大と共同研究へ

グラフェン ナノリボン

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST),富士通研究所,富士通,東京大学,科学技術振興機構(JST)らは,半導体としての極めて優秀な電気特性を持つ,幅の広い「グラフェンナノリボン(GNR)」を作製し,半導体の材料として最適な性質を示すことを確認した()。 グラフェンは,導体である金属のように電気を良く通すが,細く長いリボン形状にすることにより,半導体の性質を持たせることができるうえ,リボンの幅の太さによりバンドギャップが変化し,通常,リボン幅が細くなるにしたがって,周期性を繰り返しながらバンドギャップは大きくなる。 バンドギャップを形成するために必要なGNRの幅は数nm程度と細いため,金属基板に前駆体分子を堆積するボトムアップ合成法が用いられる。 これまで,エッジ構造やリボン幅が精密に制御されたGNRが何種類か合成されてきたが,LSIに使用するにはバンドギャップが2eVから4eVと比較的大きく,シリコンと同程度である1eV程度,あるいはそれ以下のバンドギャップを持つGNRを合成するには,GNRの幅を広くする必要がある。 量子化学計算により炭素原子17個分の幅のGNRであればバンドギャップを1eV以下に縮小することができるが,そのためにはより幅が広い前駆体分子が必要になる。 しかし前駆体分子のサイズが大きくなると,昇華に必要な温度が高くなり,気体になる前に分解してしまう。 そこで研究グループは,前駆体分子の設計から工夫し,炭素原子17個分の幅とアームチェア構造のエッジを持つ,17-AGNRの合成に世界で初めて成功した。 合成方法は従来のボトムアップ方式と同様だが,前駆体分子は,サイズが大きくならないようにできるだけシンプルな構造で,高温での昇華に耐えうる耐熱性のあるユニットで構成した。 また,この前駆体分子を,実用化に必須となる短工程で合成するルートも確立した。 合成に成功した17-AGNRではエッジ構造を反映した凹凸が確認できた。 また,リボン幅方向に8個の六角形が連なった構造も明確に確認できた。 さらに,理論計算と一致する,約0. 6eVのバンドギャップを持つことも確認した。 研究グループは,今後,17-AGNRを使ったトランジスタなどのデバイスを試作し,理論的に予想されているGNRの電荷輸送特性を検証する。 さらに,今回開発した前駆体分子の設計・GNR化技術・構造解析手法を発展させていくことで,様々な構造や特性を持つGNRの開発を推進するとしている。

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新しい高分子化反応「リビングAPEX重合」を開発 2019-06-27 学技術振興機構,名古屋大学 ポイント• 次世代炭素材料として期待されるグラフェンナノリボンは、その長さや幅、構造が電子物性に大きな変化を与えるが、従来の合成手法では全てを精密制御できなかった。 効率的な高分子重合法(リビングAPEX重合法)を開発し、長さ、幅、構造を精密制御してグラフェンナノリボンを合成することに、世界で初めて成功した。 さまざまな構造をもつグラフェンナノリボンを精密に設計・合成できるので、次世代半導体など、広範囲にわたる応用展開への道をひらくと期待される。 JST 戦略的創造研究推進事業において、ERATO 伊丹分子ナノカーボンプロジェクトの伊丹 健一郎 研究総括(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM) 拠点長/教授)、伊藤 英人 化学合成サブグループリーダー(名古屋大学 大学院理学研究科 准教授)、矢野 裕太(名古屋大学 大学院理学研究科 博士後期課程3年)らの研究グループは、リビングAPEX(エイペックス)重合法と呼ばれる画期的な高分子化反応を開発することによって、グラフェンナノリボンの完全精密合成に世界で初めて成功しました。 グラフェンナノリボンはグラフェンをナノメートルサイズの幅に切り出した帯状物質であり、シリコン半導体を超える半導体特性や透明性、柔軟性などから、次世代のトランジスター、センサー、電子回路などへの応用が期待されています。 グラフェンナノリボンの性質はその長さ、幅、エッジ構造 注1)に大きく依存するため、電子デバイスに応用するためには原子レベルで精密に合成することが不可欠です。 しかし、これまでの化学的・物理学的合成手法では、欠損が生じる、長さが制御できないなどの問題がありました。 本研究グループは、長さ、幅、エッジ構造の全てを制御可能な新規高分子重合法「リビングAPEX重合法」を開発し、グラフェンナノリボンの精密合成を世界で初めて達成しました。 合成したのはフィヨルド型と呼ばれる幅1ナノメートル程度のグラフェンナノリボンで、重合開始剤とモノマーの混合比率を変えるだけで最長170ナノメートル程度まで長さを自由自在に変えられることが分かりました。 さらに酸化反応を施すことでアームチェア型グラフェンナノリボンに変換できることも見いだしました。 本研究成果は、世界初の精密グラフェンナノリボン合成として材料科学分野に新たな道をひらく画期的な成果です。 今回開発した手法を用いて合成できる均一な構造の各種グラフェンナノリボンは、田岡化学工業株式会社と共同で量産化技術の確立を目的とした研究を行うことになっており、量産化の進展により、世界中の研究者によってさまざまな応用展開研究が一気に加速することが期待されます。 本研究成果は、2019年6月26日(英国時間)に英国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されます。 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) 研究プロジェクト:「伊丹分子ナノカーボンプロジェクト」 研究総括:伊丹 健一郎(名古屋大学 大学院理学研究科/トランスフォーマティブ生命分子研究所 拠点長/教授) 研究期間:平成25年10月~平成31年3月 <研究の背景と経緯> 原子1個分の厚みをもち、炭素原子が六角形の格子状に連なった2次元層状物質であるグラフェン 注2)は、2004年に合成・単離されて以降、その優れた電荷移動性、熱伝導性、透明性、機械的強度、柔軟性などに注目が集まるとともに、基礎研究や半導体材料への応用研究が盛んに行われてきました(図1)。 グラフェンはバンドギャップ 注3)をもたないため導体として働きますが、近年グラフェンにバンドギャップをもたせて半導体へ応用しようとする試みが盛んに検討されています。 その有力候補として期待される方法の1つが、グラフェンをナノメートルサイズの幅に切り出した帯状の物質「グラフェンナノリボン」です。 グラフェンナノリボンは、グラフェンから引き継がれる優れた電荷移動性や柔軟性に加えて、バンドギャップと高いオン/オフ比をもつことが予想されていることから、既存のシリコン半導体を超える次世代の半導体材料になると期待されています。 また、グラフェンナノリボンはその幅やエッジ構造などの違いによって金属的性質(導体性)を帯びることも分かっているため、電子回路における金属に取って代わるナノ配線として利用できる可能性があります。 しかし、これら半導体性と導体性(バンドギャップの大きさ)、電子と正電荷の流しやすさ、オン/オフ比の大小などは、グラフェンナノリボンの長さ、幅、エッジ構造に強く依存します(図2)。 従って、グラフェンナノリボンを用いた次世代電子材料の開発には、長さ、幅、エッジ構造を精密に制御してグラフェンナノリボンを合成する必要があります。 これまで、世界中のさまざまな研究者によってグラフェンナノリボンの合成法が開発されてきました。 代表的な合成法は大別してトップダウン合成法とボトムアップ合成法があります(図3)。 トップダウン合成法には、レーザーを用いたリソグラフィー法によってグラフェンからグラフェンナノリボンを切り出す方法や、カーボンナノチューブに化学的な「傷」を加えてグラフェンナノリボンへと切り開く切開法などがあります。 しかし、これらの手法では原子レベルでの幅や構造の制御は不可能であり、グラフェンナノリボンのエッジには必ず化学的な欠陥や欠損が生じてしまいます。 一方、ボトムアップ合成法は、入手が容易で化学的に変換可能な有機小分子を用い、さまざまな有機合成化学的手法 注4)や金属表面重合法によって段階的に組み上げてグラフェンナノリボンを合成する手法です。 この手法は「大量合成が可能」、「幅、エッジ構造の原子レベルでの精密制御が可能」といった利点をもっていますが、トップダウン合成法と同様、「長さ」を制御することはできません。 他にもボトムアップ合成法の中には、化学気相成長法、窒化ケイ素熱分解法、有機分子と金属表面を使った表面重合法など、さまざまな特徴と利点をもつ合成法がありますが、「長さ、幅、エッジ構造の制御」を達成した合成方法は今までありませんでした。 つまり、グラフェンナノリボンの基礎・応用研究で必要不可欠である「長さ、幅、エッジ構造」が全て制御されたグラフェンナノリボンは誰も手にすることができませんでした。 そのため、反応性の高い臭化物などに変換してから用いる必要がありました。 本研究グループは以前に、芳香族炭化水素化合物のK領域 注9)と呼ばれる芳香環の中でもわずかに反応性が異なる部位に着目し、フェナントレンなどを直接用いてより大きな芳香族炭化水素へと1段階で変換する「APEX反応」を開発してきました。 今回の研究では、連続的にAPEX反応を行う、つまりAPEX重合反応を行うことで、グラフェンナノリボンの1段階合成に成功しました(図4)。 これまでのボトムアップ合成法と比べて、今回のAPEX重合法は合成工程数が短い(1段階)という利点もあります。 モノマーの構造を変えれば幅の長さをさまざまに調整することができると考えられます。 リビング性とは副反応の少ない連鎖重合反応を指し、高分子の成長末端が失活することなく高分子成長する性質を指します。 重合反応がリビング性をもっている場合、開始剤とモノマーの混合比を変えるだけで、高分子の長さを精密に制御できることが知られています。 しかし、これまでグラフェンナノリボンを合成できるリビング重合法はありませんでした。 実際、今回開発したリビングAPEX重合反応では、フェナントレン開始剤とベンゾナフトシロールモノマーの物質量比を1:10から1:500まで変えて重合させたところ、その物質量比に比例した長さのグラフェンナノリボンが収率80パーセント前後で得られました。 数平均分子量は3,000から150,000程度まで、長さは十数ナノメートルから最長170ナノメートル程度まで自在に調整可能です。 例えば、置換基Aをもったベンゾナフトシロールモノマー重合させた後、置換基Bをもったベンゾナフトシロールモノマーを重合させると、両者のモノマーブロックがAAAAA-BBBBBのように精密に配置したグラフェンナノリボンのブロック共重合体を合成することができました。 ブロック共重合でグラフェンナノリボンを合成できたのは世界で初めてです。 また、合成したフィヨルド型グラフェンナノリボンは塩化鉄(III)を作用させてさらに酸化させることで、アームチェア型グラフェンナノリボンに変換することができました。 アームチェア型グラフェンナノリボンは幅の違いによって半導体性と導体性が周期的に変化することが予想されている注目度の高いグラフェンナノリボンです。 今回変換したグラフェンナノリボンはN=8アームチェア型グラフェンナノリボンと呼ばれており、理論的計算では電気を流す金属的性質(導電性)をもっていると予想されています。 将来、これらの合成技術を組み合わせれば、部分的に幅やエッジ構造が異なるグラフェンナノリボンや、1本のグラフェンナノリボン中に金属配線の役割をもつ部分と半導体の役割をもつ部分を作り出すことができるかもしれません。 以上のように本研究では、グラフェンナノリボンの「長さ、幅、エッジ構造」の全てを制御可能な新規重合反応「リビングAPEX重合法」を開発し、さらにはフィヨルド型、アームチェア型、ブロック共重合型などさまざまなタイプのグラフェンナノリボンの効率的合成を達成しました。 <今後の展開> 「長さ、幅、エッジ構造が整ったグラフェンナノリボン」は材料科学分野で切望されてきた分子です。 今回得られたグラフェンナノリボンは、半導体性を示すフィヨルド型グラフェンナノリボンと、金属的性質をもっていると理論予測されていたアームチェア型グラフェンナノリボンです。 詳細な性質は今後明らかにされていくことになりますが、予想通りわずかな構造の違いや長さの違いで性質が劇的に変化することが分かりました。 本研究グループが開発した「リビングAPEX重合法」を使えば、開始剤やモノマーの種類、混合比率を変えるだけで、今回実施したもの以外の多種多様な長さ、幅、エッジ構造をもった「純正グラフェンナノリボン」が合成できると期待されます。 今回合成したものを含め、一連の「純正グラフェンナノリボン」が次世代半導体材料として利用され、各種高性能電子デバイスに搭載される可能性があります。 シリコン半導体や金属ナノ細線に取って代わる材料がグラフェンナノリボンで実現できれば、軽くて曲げられる半導体や、省電力の超集積CPU、小型で大容量の半導体メモリー、高周波デバイス、高感度センサーなど、非常に幅広い応用が期待されます。 また、名古屋大学(トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM))と田岡化学工業株式会社(本社:大阪府大阪市、取締役社長:佐藤 良)はナノグラフェンとグラフェンナノリボンの製造方法に関する共同研究契約を締結するとともに、名古屋大学が出願中であるグラフェンナノリボンに関する特許(特願2017-563871)について、製造実施に係るオプション契約を締結しました。 今後は両者でモノマーやグラフェンナノリボンの量産製造法の確立を目的とした共同研究を行い、量産化の進展により、さまざまな応用展開の促進を通じて実用化を目指していきます。 <付記> 本成果は同時に、以下の事業・共同利用研究施設による支援を受けて行われました。 研究期間:平成30年4月~令和2年3月 公益財団法人住友財団 基礎科学研究助成(141495) 研究代表:伊藤 英人 公益財団法人大幸財団 自然科学系学術研究助成 研究代表:伊藤 英人 日本学術振興会 科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)(JP17K19155) 研究代表:伊藤 英人 自然科学研究機構 岡崎共通研究施設 計算科学研究センター 施設利用(B) 伊藤 英人 <参考図> 図1 グラフェンとグラフェンナノリボン グラファイトを1枚1枚剥がすことで得られる厚さ0.4ナノメートルのグラフェンと、グラフェンをさらにナノメートルサイズに切り出すことで得られるグラフェンナノリボン。 いずれも炭素原子が六角形のハニカム構造をしている。 図2 グラフェンナノリボンの長さ、幅、エッジ構造 直径や炭素配列の異なるカーボンナノチューブの例。 グラフェンナノリボンにはさまざまなエッジ構造があり、さらに幅や長さの違いがある。 これらの違いによって異なる性質(導電性、半導体特性、光応答性、スピン磁性など)をもつ。 そのため、グラフェンナノリボンを電子材料として応用するためには、長さ、幅、エッジ構造の全てを精密に制御して合成することが必要となる。 図3 従来のグラフェンナノリボンの合成方法 リソグラフィー法やカーボンナノチューブ切開法、化学気相成長法、窒化ケイ素分解法、ボトムアップ合成法など、各種各様の特徴をもった合成方法があるが、いずれもグラフェンナノリボンの長さを制御できない、大量合成ができない、欠損が生じる、多段階工程が必要であるなどの問題もあった。 図中の赤、青、緑の丸は、従来のカップリング反応に必要な塩素、臭素、ヨウ素、金属などの反応性の高い原子を指し、このような原子を「官能基」と呼び、その原子を結合させることを「官能基化」と呼ぶ。 図4 フェナントレン開始剤とベンゾナフトシロールモノマーを用いたリビングAPEX重合法によるフィヨルド型グラフェンナノリボンの合成 今回開発に成功した「リビングAPEX重合法」の概要。 長さ、幅、エッジ構造の全てを精密制御して合成することに世界で初めて成功した。 石油から直接入手できるフェナントレンを重合開始剤として用い、ベンゾナフトシロールモノマーを使ってトリフルオロ酢酸パラジウム、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、オルトクロラニル酸化剤などを作用させるだけで、1段階でグラフェンナノリボンが合成できるのも長所の1つである。 図5 リビングAPEX重合の概要とグラフェンナノリボンの長さの制御 フェナントレンのK領域と呼ばれる芳香族化合物に頻繁にみられる部位でのみ重合反応が進行し高分子成長する。 成長末端には常にK領域が出現するため、重合反応は常に成長末端でのみ起こる。 本反応はリビング性を帯びたリビングAPEX重合であり、開始剤とモノマーの混合割合を変えるだけで、グラフェンナノリボンの重合度(長さ)を精密に制御することが可能となった。 図6 ブロック共重合とアームチェア型グラフェンナノリボンへの変換 図7 リビングAPEX重合のイメージ図 有機溶媒中に漂うベンゾナフトシロールモノマーが、成長中のグラフェンナノリボンの末端に近づいて反応する様子をイメージした。 (作成者:名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 高橋 一誠 氏) <用語解説> 注1)エッジ構造 グラフェンナノリボンの周辺にみられる繰り返し構造の形状。 図2に示したように、形状の特徴からアームチェア(肘つき椅子)型、ジグザグ(ぎざぎざ)型、コーブ(入江)型などの名称が付けられている。 注2)グラフェン 2004年、コンスタンチン・ノボセロフ 博士とアンドレ・ガイム 博士らが粘着テープを用いてグラファイトからグラフェン1層分を引き剥がし、その物性や導体、半導体材料への応用可能性を明らかにした。 その後グラフェンに関する基礎、応用、理論研究が世界中で爆発的に行われ、2010年には2人にノーベル物理学賞が与えられた。 注3)バンドギャップ 結晶などの沢山の原子から構成される物質にはさらに多くの電子が詰まっており、それぞれの電子は飛び飛びのエネルギー値をもった電子軌道上に存在している。 電子が詰まった電子軌道の集まりは価電子帯、これらよりもより高いエネルギー値の電子軌道の集まりは導電帯と呼ばれている。 価電子帯と導電帯の間の電子が存在することができないエネルギーの領域はバンドギャップと呼ばれている。 一般に、バンドギャップが大きいものは電気が流れない絶縁体であり、金属や黒鉛のように非常に小さいか0であるものは導体である。 バンドギャップがある程度小さいものは絶縁体と導体の両方の性質を示すことから、半導体と呼ばれている。 注4)有機合成化学的手法 石油などの天然資源から得られる有機分子を使い、分子同士をつなげたり切ったりすることによって別の分子へと変換する手法。 医薬品、香料、染料、樹脂、化学繊維、プラスチックなどの製造に欠かせない技術。 注5)芳香族化合物、フェナントレン、芳香環、芳香族炭化水素化合物、ベンゼン環、ナフタレン環 ベンゼン、ナフタレン、フェナントレンをはじめとする、芳香族性を帯びた環状の化合物の総称で、石油に多く含まれている。 また、ベンゼンのように炭素と水素だけからなる芳香族化合物を「芳香族炭化水素」と呼ぶ。 また、ベンゼンやナフタレン自身の環状の構造を、「環」をつけてベンゼン環、ナフタレン環と呼ぶ。 フェナントレンなどの芳香族炭化水素を原料に、1段階でより分子量の大きな芳香族炭化水素を与える一連の反応を指し、著者らが以前から精力的に開発してきた。 今回発表した新しい高分子化反応は、APEX反応が連続的に起こるため「APEX重合」と名付けられた。 注7)ベンゾナフトシロール ベンゼン環とナフタレン環がケイ素原子を介してつながった化合物。 注8)ブロック共重合 高分子を構成するモノマー単位AとBが、-AAAAA-BBBBB-のように連なった高分子をブロック共重合体と呼び、これを与える重合反応をブロック共重合と呼ぶ。 注9)K領域 グラフェンや芳香族炭化水素に頻繁にみられる凸に突き出た2つの炭素原子からなる部位(下図中赤色の部位)。 フェナントレンはK領域をもつ最小の芳香族炭化水素である。 K領域は通常は安定で反応することがないが、パラジウム塩、銀塩、オルトクロラニルの添加によってAPEX重合による今回の変換反応が可能となった。 注10)リビング性 高分子鎖の成長末端が次の重合成長反応に対して十分な活性をもっている(生きている)場合、「リビング性」をもっているという。 またリビング性のある連鎖重合反応は「リビング重合」と呼ばれている。 今回はAPEX反応に活性な「K領域」が常に高分子成長末端に出現し、連鎖的に次のAPEX反応が進行する「リビングAPEX重合」であるといえる。

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